(26)女子高生が同級生に将棋の駒の動かし方を教えたら、半年後に近畿3位になった話
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※記憶に基づいた実話だが、個人情報特定を避けてストーリーに影響がないところは改変するかもしれない。
※正確には8ヶ月後である。
8ヶ月後なう
近畿大会女子団体戦準決勝で敗退し、女子高生が同級生に将棋の駒の動かし方を教わったら、半年後に近畿3位になった彼女たちが初めにしたことは、徳島観光である。いってらっしゃい。
私は女子個人戦の準決勝が始まろうとしていた。
女子団体戦は3位確定。
私もここで負けたら3位確定。
一緒なのもどうなん……?
やはりプライドが許せず、しかし「負けたらどうしよう」という不安で脳内が満たされていた。
だが、幸いにして勝利した。
決勝進出。ここでようやく女子団体戦より上位になることが確定してほっとした。
そして決勝戦の相手は、予想通りJさん。
彼女は1学年下の福井県代表で、前年度の優勝者。因縁のある相手だ。
まず高校2年夏の全国大会。会場は鳥取県倉吉市。準々決勝で対戦し、敗れた。このときは手も足も出ない完敗で、実力差を感じた。
そしてちょうど1年前、高2秋の近畿大会。会場は大阪市内の高校だった。
この年の女子個人戦は2リーグに分かれての予選リーグを行い、1位同士が決勝を、2位同士が3位決定戦を指すことになっていた。
予選リーグの最終戦、全勝同士で私とJさんは対戦した。もう1つのリーグに5級以上の子はいなくて、実質的な決勝戦だった。
対局は有利に進めていると思っていたが、終盤にすごくいい手が飛んできた。
その手が見えていなかった私は、自玉に必至がかかったと思って投了した。
すぐに観戦していた大人たちから「えっ、投げるの?」と言われた。
その局面、私が勝っていた。必至と思っていた自玉は、詰めろでもなかった。
大人たちが「ああ指せば勝ち」「こう指せば勝ち」と次々に指摘してくる。
そのわずらわしさと、勝っていた将棋を自ら捨ててしまったみじめさで私は大泣きした。ずーっと泣いた。
泣いていたが、3位決定戦があった。指さずに帰ろうと思ったが良心が許さず、でも泣き止むことはできず、泣きながら指して勝った。
内容はとにかくぼろぼろ。頭が真っ白ななか、反則じゃない手を指すのが精いっぱいだった。
相手の子もやりづらかっただろう。
もう耐えきれず、表彰式は出ずに泣きながら会場を飛び出した。
(表彰状は手元にあるので、郵送されたのか…?)
今となっては「泣きながら3位決定戦を指して勝った」というのが藤井聡太二冠と共通のエピソードになって、おいしいのだが。
それから1年、久々にJさんと対局する機会が訪れた。
近畿大会の優勝もしたいし、Jさんにも勝ちたいと思った。
(27は最終回です)
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