スイス在住ママ達の起業リアルトーク!レポート1
去る10月23日(日)に、スイスラボ主催のミニシンポジウム、題して「スイス在住ママ達の起業リアルトーク!」がオンライン開催されました。
ご参加くださった皆様、ご参加ありがとうございました。
「やりたいことをカタチに」は、スイスラボが応援する、ヨーロッパ在住女性達の活動の一つです。
今回のミニシンポジウムでは、スイスに住みながら、しかも子育てをしながら、自分のやりたいことを仕事にすべく起業した、3人のママ達に登壇していただき、その試行錯誤っぷりをたっぷり一時間ほど語っていただきました。
起業とは言っても、「株式会社を興して登記にまでこぎつけた」みたいな大仰なものではなく、個人事業主として活動を始めるといった、プチ起業と呼べそうな内容。
そうは言っても、外国でその一歩を踏み出すのには相当な勇気と行動力が要ったはず。
海外で思いをカタチにすべく、その第一歩を実際に踏み出した方々の等身大のお話を肩肘張らずに聞いていただき、参加者のみなさまのインスピレーションや勇気の素にしていただきたいという企画でした。
当初の予定では、スイスラボのメンバー3人
お弁当クラスや水引アートクラスを開催する「アトリエ・千寿子」主宰のサウレル千寿子さん。ベルンのLangassTeeで茶道のインストラクターもされています。
ヨガ講師・登山インストラクターとして活躍する西村志津さん
紙を専門とする美術品修復師で、Thun にてアトリエ・ヴェルソを共同主宰する高井千恵さん
それから、
ゲストの加藤彩さん。ご自身の出産・育児の経験から、スイスでドーラ(助産婦)となられ、ご活躍中。
の4名にご登壇いただく予定でした。
が、高井千恵さんが体調不良で登壇できず、残念無念!
千恵さんのお話も聞きたかったというお声が参加者から届いており、この埋め合わせをどこか別の機会にできたらと思っているところです。
乞うご期待!
司会進行は、当アソシエーションの代表、後岡亜由子さんが務めました。
長い前置きはこのくらいにして、早速ミニシンポジウムのレポートに入りたいと思います。
理想のキャリア・働き方のビジョン
亜由子さん(以下 亜):女性は、海外移住だけでなく、出産・育児などによって、大きなライフステージの変化を経験します。それによって、キャリアが大きく影響を受けます。そのあたりのことで悩んでらっしゃる方も多いのではないかと思って、今回この企画を考えたんですけれど、最初のテーマは「理想のキャリアビジョン」について聞いてみたいと思います。
理想とするキャリアビジョンは、人によって様々だと思いますが、まず、千寿子さん、どんな働き方を思い描いて今の仕事を起業したのか、とか、その動機や転機などをお聞かせ下さい。
千寿子さん(以下 千寿):こちらに来る前、まだ日本にいた頃のことなのですが、子供ができてから引越しの多い生活でした。それを機に「今までの働き方では無理だな」と気づき、もっとフレキシブルな働き方が良いなと思うようになりました。金沢に住んでいた頃、日本文化に接する機会がすごく多かったので、日本文化関連の習い事をたくさんしました。
その後スイスに引っ越してから、当時の経験がとても活きてきてありがたさを噛み締めてます。
志津さん(以下 志):金沢では何を習ってたんですか?
千寿:日本料理は東京にいる頃から習ってたんですけど、茶道と、水引アクセサリーの作り方です。
志:おお、全部つながりますね。
千寿:はい。で、どう起業するに至ったかというと、まず最初にスイスラボに誘ってもらって、「お弁当プロジェクト」をやってみたんです。最初は「自分にできるんだろうか?」と不安でしたが、やってるうちにどんどんカタチにしていった感じがします。
亜:スイスラボがちょっとでも役に立ったみたいで嬉しいです。
では、彩さんの起業の動機や転機をお聞かせ下さい。とはいえ、スイスにくる前のお話も面白いですよね。
まず、アメリカで写真家を目指され、ところがその後日本で宅研の資格を取られたんですよね。その後、スイスにいらしてご結婚されたという・・・。
彩さん(以下 彩):はい、お察しのとおり、ふらふらした人生でして(笑)。
写真家になりたいと思って、アメリカに行って勉強していたんですけど。両親が自営業ということもあり、あまり人生のレールを意識してこなかったので、30歳くらいまでにカタチになれば良いかと思っていました。でもあるときこのままフラフラしているのもまずいと思い始め、地に足を付けようと日本に帰国、東京の不動産屋さんで働き始めました。そこで、給与アップが動機で宅研を取ったんですけど、その過程でコツコツ積み上げることの大切さを学びました。その後、スイス人の夫と思いがけず出会い、スイスに来ました。
Doulaになろうと思ったのは、自分が産後鬱になったのがきっかけでした。ちょうど年子を産んだあとだったんですけど、その時の不安・プレッシャーが、同じような境遇の人たちに何かできることはないだろうか、一緒に歩んでいける方法はないだろうかという思いにつながりました。
仕事に関しては、私は自由にやりたいと思っています。会社や時間に縛られたくないという気持ちから行き着いたのがこの形(自営業)かなと思います。
志:スイスに嫁いでから何か勉強されてませんでしたっけ?
彩:はい、こちらに来てからフリブールの大学院で経営学のマスターを取って、その後チューリッヒの会社で働いていました。でもそこは子供を育てながら働く選択肢の無い環境でしたので、妊娠した時点で退職しました。その経験で、企業で働くことの制約を実感し、自分で自由に働ける方法を模索するようになりました。
亜:なるほど、そういう経験を経て今の形態に行き着いたわけですね。では、志津さん、どんな風に今の仕事を起業したのか、とか、どんな働き方を思い描いていたのか、聞かせてください。
志:大学卒業後に「海外に出たい!」と思い、お金を貯めてカナダにワーキングホリデーに行きました。カナダの会社でスキーガイドとして働いていたところ、「スイスにも支社があるよ」と聞き、スイスにやってきました。スイスでは、冬はスキーガイド、夏は登山ガイドとして働きました。が、そのうち人生プランが不安になり、日本に帰国、旅行会社に就職しました。ところが慣れないオフィスワークで体調不良になり、やはり独立しようと決心。登山ガイドとスキーガイドの資格を取りました。
旅行会社で働いていたとき、やはり自由に働けないということ、時間の制限がとても厳しいことが苦痛で、独立したいと思いました。
亜:ヨガのインストラクターにはどういう経緯でなったんですか?
志:旅行会社勤務時代に体調不良になったときに、「やっぱり運動しないといけない」と思ってヨガスタジオに行き始めたのがきっかけです。畳一畳分くらいのスペースでバランスも整えられるという魅力にハマりました。
亜:三者三様の紆余曲折ですね。いきあたりばったりなようでいて、全部つながって、今の皆さんがある、というお話を聞かせていただきました。
具体的なアクションプラン
亜:今までは理想的な働き方のビジョンを伺っていたのですが、今度は具体的なプランについて聞いていきたいと思います。「こういうことしたいけど、じゃあ実際どうやって実行に移したのか」「やりたいことをカタチにするプロセス」について伺いたいと思います。
千寿子さんから、どうぞ。
千寿:ずっと会社員だったので、自分で何か興すという経験がまったくない状態でスイスに来ました。頭の中にあるアイデアをカタチにしていくってどうしたらいいのか分かりませんでした。なので、とりあえず「やりたいこと」を書き出していくということをしました。いまでもその紙は残っていて、「これ全部できたらいいな」と今でも思います。書くことの大切さを学びました。
スイスに来てまだ3年半だったので、地元の豆知識や日本人の知恵もあまりなかったので、仲良くなった友達にも色々助けてもらいました。
とりあえず書き出した「やりたいこと」を、ホームページにしてみようと思い立って、次にホームページを作りました。まるで修行僧のように地味な作業を繰り返した感じです。
亜:コツコツ積み重ねながら実現していった感じです。
では、次は彩さん、具体的なアクションプランについてお聞かせください。
彩:産後鬱で辛かったとき、まだDoulaという職業が存在することを知りませんでした。でも、その辛い状況をどうにかしたくて色々検索して、Doulaという存在を見つけました。さらに調べたら、世界中にDoulaの養成課程があることも分かり、当然スイスにもちゃんとDoulaの養成課程を統率するアソシエーションがありました。そこに早速「Doulaになりたい」とコンタクトを取って、面接を受け、そこからすべて始まりました。その時養成コースは満員で空きがなかったんですけど、日本人がいないからということで、先生がコースを取らせてくれたんです。「やっぱり、日本人女性は日本人にサポートしてもらうのが自然だから」と。
亜:すごい行動力ですね。「素直にアドバイスを聞いて行動に移す」って何か仕事を始めるときにはすごく重要だと思います。
彩:自分のコンフォートゾーンを出ないといけない時って、一番エネルギーが要るし、恥もかくし、大変。その上、海外だし、ハンディキャップばっかり。「なるべく効率よく」という考えは捨てるしかないですよね。
亜:そうですね。誰もそういう辛いところは見せないけれど、実際は恥もかくし、一筋の道というわけにはいかないです。
では、志津さんのアクションプランについて聞かせてください。
志:26、7歳から独立し始めたんですけど、その頃は先輩や上司だった人など、色々な人にコンタクトを取って、仕事を紹介していただくなど、たくさん助けていただきました。その後、結婚の前後は「一人で頑張らないと」と思っていたのですが、30代でスイスに移住、仕事をせずに妊娠・出産を繰り返した時期がありました。子供の手が少し離れて「またもう少し活動したい」と思っていたところにコロナ禍がやってきて、千寿子さんに「オンラインヨガをやってみたら」と背中を押してもらって挑戦。ところが、決済システムなどのホームページ製作が苦手で自分一人の手には負えず、人に頼ることを30代半ばにして学びました。人に頼ることを前向きにとらえることができるようになったおかげで、次に進むパワーも得られたような気がします。
亜:加齢とともに、体力も落ちますから、人に頼ることってほんとに大切です。
(レポート2に続く)