見出し画像

「歴史からすっぽりと抜け落ちてしまいそうなものたち」を拾い集める本

出版された時期こそ違えど、いずれも「まだ健在な、あの頃のことを覚えている老人」へ直接取材をしてきたレポ。このままだと社会から忘れられてしまうであろうことを、一般論としてではなく、当事者の言葉をかき集めているとこが素敵。「歴史からすっぽりと抜け落ちてしまいそうなものたち」を拾い集める本たちだ。

マーケティングやアクセス数などとは縁のない、でも間違いなくそこにあったもの、人、文化、習慣、そして事件、、、、そうしたものを記していこうという著者の熱意に感動が止まらない本だった。

■「忘れられた日本人」 #宮本常一 著 1960年

西日本を中心に、古き時代を語れる老人たちに直接話を聞いてきたレポート。つげ義春の本にも出てきた、四国にあったと言われる「盗人宿」についてもここに初めて記されたものと思われる。明治〜昭和初期の、これまで語られてこなかった農民〜漁民、つまり百姓の日々が浮き出てきて面白かった。生々しい「夜ばい」についての話も多数。これがたった100年ほど前の日本なんだと知る衝撃の宝庫。すぐそこにある過去。


■「南洋と私」 #寺尾紗穂 著 2015年(2019年文庫)

 シンガーソングライターでありつつも、宮本常一氏と同じ佇まいを感じる著者の、サイパン〜八丈島〜沖縄の戦前戦後を知る人々への取材集。同じく、戦前戦中戦後を一般論で終わらせない、体験者の生々しい言葉が並ぶ。同じサイパン人でも日本に感謝してるという親日的な人と、日本批判をする人が混在する。観光誘致的には「親日的なサイパン人」と紹介されがちだがその実は??著者の寺尾紗穂は常に物事の両義性を炙り出そうとする、更には注目されない側の方により焦点を絞る、更にはそのフットワーク。どの本を読んでもそのフットワークにまず感動してしまう。

*****

こう言う本を読んでいると、まだ健在な両親や親戚に、昔の話を沢山聞いておきたくなる。今度会うときにいろいろと聞いてみることにしよう。血だけではない、受け継ぐべきものを確認しておきたくなってきた。

いいなと思ったら応援しよう!

SWING-O a.k.a.45
よろしければサポートをお願いします!収益はSWING-Oの更なる取材費に使わせていただきます!