仮名手本忠臣蔵
大阪市にある国立文楽劇場で開場四十周年記念 文楽公演「仮名手本忠臣蔵」を見てきました。と言いますのも、私は放送大学で人生二度目の大学生として勉学に励んでいまして、今学期に面接授業の「文楽を鑑賞する」という科目を受講(2日間、全部で8時限の対面の授業です)、昨日は座学として教室で文楽について学び、2日目の今日いよいよ劇場へ行き開演前に1時間ほど先生から仮名手本忠臣蔵についての解説をしていただき、11時からの「第1部」を鑑賞するという日程だったのです。
せっかく国立文楽劇場のある関西にいるのですから、一度は文楽を見に行きたいと思っていました。でも周りに文楽について詳しい人もなく一人で何も分からず見に行くのも心細いし…と思っていたところ、放送大学大阪学習センターで文楽の授業が行われることを知り張り切って申し込みました。
生まれて初めての国立文楽劇場です。入口のある1階ロビーにはフォトスポットになるような展示がたくさんありました。
演目に関する芝居絵の看板もかかっています。
ガラスが光って綺麗に撮影できなかったですが、なんと上村松篁の絵画もかかっていました。これは2階の劇場前のロビーにありました。
こちらも展示室にありました。令和4年の夏休み文楽特別公演で上演した「紅葉狩」にちなんだ、刀剣男子とのコラボレーションだそうです。
さて、「仮名手本忠臣蔵」です。これはとても長いお話で、全部で十一段あって、いま上演している公演では11時からの第1部で大序から四段目を上演、午後4時からの第2部で五段目から七段目までを上演します。1日中見ても全部は見られなくて、来年1月からの初春文楽公演で八段目から九段目を上演するということです。それでもまだ全部じゃないことにびっくりですが、通しで上演されることはあまりないようですね。
忠臣蔵のストーリーはとても有名で、テレビの時代劇で見たことのある方が多いと思います。「仮名手本忠臣蔵」は史実の赤穂事件に忠実ではなく、江戸時代には幕政に関わる事件を扱うことは禁じられていたため、太平記の世界に置き換えて人名も史実の名前をもじったものに変えられています。たとえば、吉良上野介は高師直に、浅野内匠頭は塩谷判官に、大石内蔵助は大星由良之助のような感じです。
歌舞伎の演目にもある「仮名手本忠臣蔵」ですが、実は人形浄瑠璃の方が先に作られ、こちらで大変な人気の演目だったため歌舞伎でもやるようになったそうです。
人形は3人の人が動かしていて、お人形なのに不思議なことに表情がとても豊かなように見え、特に人間国宝吉田和生の操演する塩谷判官が高師直に罵詈雑言されているシーンでは、怒りを抑え耐えているようにしか見えず、その怒りが頂点に達して斬りつけるという流れがとても見事でした。
今日の鑑賞では、その塩谷判官が切腹するところまでで終了。塩谷判官が最も信頼する家臣である大星由良之助が主君の恨みを晴らそうと決意しながら屋敷をあとにする場面も、とても素晴らしくて続きを見たいと思いました。
大阪には国立文楽劇場がありますが、東京の国立劇場はなくなってしまったので東京で公演をするために劇場を転々とするしかなくなり、稽古場もなくなり苦労をしているというお話も授業で聞きました。江戸時代から続く伝統芸能である文楽を守り伝えるための環境を(国や自治体には)整えてほしいと感じました。