東郷青児―美の変奏曲
神戸の六甲アイランドにある神戸市立小磯記念美術館で行われている特別展「東郷青児--美の変奏曲(ヴァリエーション)」を見に行きました。SOMPO美術館が収蔵する東郷青児作品から、油彩・素描・彫刻等70点の展示です。
美術館に到着すると、入口や受付に近隣の小学生の鑑賞授業があるという掲示があり、展示室で大勢の子供たちが学芸員さんの説明を聴いたり、手に持ったファイルに一生懸命何かを書き込んだりしていました。
上の作品は絵画作品の一番最初に展示されていたもので、その前に子供たちが大勢座って学芸員さんの質問に答えたり、考えたりしていました。
こちらの作品は18歳の時の個展の出品作だそうです。18歳という多感な時期であるので、このような時代の先端を行くような前衛的な表現なのでしょうか。この時期の作品は何点か展示されていて、キュビスムの風景画というようなものもありました。
ほぼ同時代に活躍した小磯良平もモデルにリュートという楽器を持たせたものが多く、こういった楽器を持たせるのは時代の流行みたいなものなのかなと思いました。
上は私の気に入った作品です。見た瞬間、柔らかい風を感じました。少し上を向いた女性の顔も良いなと思いました。
第5回日本国際美術展で大衆賞を受賞した作品だそうです。大衆賞は一般の鑑賞者の投票によるもので、当時の東郷の人気の高さが分かります。
東郷の作品の多くは上のような美しい女性が上品なポーズをとっているものだという印象ですが、戦時中の疎開先での経験などから、労働者の女性を描いたりすることがあったり、海外旅行先で砂漠で必死に生きる人たちを目の当たりにした経験などから描く対象が広がっていったようです。
「はちきれそうな若さと美貌を自分自身で呆れているような少女」という東郷本人の言葉が添えられていました。
女性の顔を描いた素描は何枚もあり、油彩の作品とは違った感じの、割と表情のはっきりとしたものが多かったように思います。
晩年に近い時期に描かれた油彩画は、それまでにないような絵の具を厚く塗った、こってりしたマチエールの作品が何点かありました。こちらの「緑と白」は緑に塗られた女性の視線が印象的でした。
絵画作品だけではなく、参考資料として東郷が装幀を手掛けた書籍やパンフレット類、雑誌の表紙、お菓子のパッケージや包装紙などの展示もあり、本当に人気だったことが良く分かりました。
3つめの展示室は小磯良平の作品選で、楽器を手にした女性やバレリーナを描いたものなど、東郷作品とテーマが似ているものが多かったです。
久しぶりに小磯良平のアトリエも見ました。小磯作品に登場する小道具が置いてあり、これらを展示作品の中に見つける楽しみがあるんですよね。
美術館を見終えて、美術館からアイランドセンターまで歩き、シェラトンスクエア内にあるシェラトンマルシェのカフェでランチをいただきました。先月、神戸ゆかりの美術館に来た時にこちらのカフェでお昼をいただきたかったのに、混んでいて諦めたので今日はリベンジできて良かったです。お天気が良く暖かかったため、一駅分を気持ちよく歩くことができました。