村上隆 もののけ 京都
京都市京セラ美術館で開催されている「村上隆 もののけ京都」展を見に行きました。昨夜から今朝にかけて本降りだった雨があがったものの、なかなか雲の去らない京都の空です。お天気のせいか、京都の街中を歩く人は普段よりも少ないような気がしました。
村上隆は東京藝大で博士課程まで日本画を学んだアーティストで、「スーパーフラット」を提唱して現代美術シーンに大きな影響を与えました。スーパーフラットとは伝統的な日本画から現代の漫画やアニメに共通する平面的な描き方のことですが、現代日本においての階層性のなさや大衆消費文化の浅はかさなども含まれると言われています。
展示会場は美術館の奥にある東山キューブですが、そこへ入っていく通り道になる中央ホールには上の写真の阿吽像が展示されています。美術館に訪れた人は誰でもこの展示を見ることができます。阿吽像は寺の山門にいて仏敵を遮る守護神。つまり、ここがもののけワールドに入っていくための山門なのかなと思いました。
最初の展示室にあったのが岩佐又兵衛の「洛中洛外図(舟木本)」を引用した現代の洛中洛外図です。ところどころに村上隆のキャラクターたちが遊んでいます。フラットな描き方の洛中洛外図に、村上のフラットなキャラクターたちは非常に馴染みが良いのです。
洛中洛外図の向かいには、7月より展示を開始した祇園祭礼図が。こちらは、細見美術館蔵の祇園祭礼図を下敷きにしています。
こちらの展覧会は2月から半年以上の間開催されていて、展覧会の間も新作を制作し続けて公開するというものです(それで、新作が出たら見に行こうと思っていました)。
上の雲竜図は曾我蕭白の雲竜図を下敷きにし、赤い色は北斎の鍾馗像からの引用だそうです。こちらが展示されている部屋には琳派の作品をもとにした風神雷神図もあり、見ごたえがありました。
風神雷神は時代のカラーによって風貌や体形に変化があり、たとえば俵屋宗達の描いたものと酒井抱一の描いたもの(模写)は抱一のものの方が逞しさが薄い感じで、現代の村上隆版の風神雷神はもう逞しさはなく可愛らしささえ見えるものです。このように、日本画というものは誰かが過去に描いたものを下敷きにしつつも時代の空気をそれぞれに映しだしているもので、その流れの中に村上隆もいるのだと思わされました。
私がもっとも気に入ったのは上の来迎図で、これは知恩院にある国宝「阿弥陀二十五菩薩来迎図」通称「早来迎」を元にして描かれているものです。早来迎よりも速そうです。そして、阿弥陀様が後ろを振り返ってしまっています。何を気にされているのでしょうか。
お天気が良くなくて映えない写真ですが、どなたでも見に行ける屋外の庭園に展示されたインスタレーションです。
こちらの展覧会が始まった当初から、ものすごい混雑だと聞いていて覚悟をしていましたが、やはりものすごい混雑でした。会場に入るのも行列、作品を見るのも人をかき分けかき分け。すべての展示を見終えてショップに入るのも行列、ショップのレジでも行列です。ショップでは村上とコラボした八ッ橋が並んでいて、この八ッ橋をカゴに山盛り買っている人を見て気付きました。京都に観光に来ている人も、観光のついでに見に来てるな?と。でも、良いですよね、村上の来迎図を見てから知恩院に行ってみたりするのは楽しそうです。
村上隆を見た後はコレクションルームも見ました(今年は美術館のコレクションを見て歩くぞと決めているので)。夏期の特集は「女性が描く女性たち」で、上村松園をはじめとする女性画家の作品をたくさん見ることができました。
一番気に入った作品のポストカードを購入しました。昭和15年に描かれたもので、和服姿の若い女性たちが望遠鏡を覗き込んでいます。彼女たちの知的好奇心が伝わってくるような、楽しい気持ちが伝わってくるような素敵な絵だと思います。いま放送している「虎に翼」の学生時代の雰囲気がこんなだったなあと思ったりもしました。
さて、今朝の朝刊に村上隆展についての記事が掲載されていましたのでご紹介します。今回の個展の資金集めのために「ふるさと納税」を活用したという内容で、「芸術を振興する予算が行政から下りてこないのが現状」という村上隆の話もあり、いまの文化芸術に関する日本の現状について考えさせられました。