源氏・応挙・若冲 近世絵画と久保惣の名品
大阪府和泉市にある和泉市久保惣記念美術館へ行きました。こちらの美術館は、泉北高速鉄道の和泉中央駅からバスで5,6分くらいのところにあります。バスは1時間に1,2本程度ですので時間を調べて行くことをおすすめします。
今やっているのは特別陳列「源氏・応挙・若冲 ―近世絵画と久保惣の名品―」で、ふるさと納税による収入で購入したという応挙の「老松鸚哥図」が初出陳されるということでしたので、これを楽しみに見に行きました。
5月19日までの前期展示には国宝である「歌仙歌合」があったのですが、後期展示では重文の「法華経巻第一 方便品第二」や「駒競行幸絵巻」が見られました。
駒競行幸絵巻は平安時代の「栄花物語」巻23段「こまくらべの行幸」に取材した絵巻です。関白藤原頼通が、姉の彰子と後一条天皇、東宮・敦良親王を迎え、道長や他の公卿たちも招いて「競馬」を催した様子を描いたもので、天皇と東宮の行幸啓の場面です。細かく描き込まれた美しい線と色彩が印象的でした。
上の図版は美術館のデジタル・ミュージアムよりお借りしています。重文の「源氏物語手鑑」より乙女の巻です。絵は土佐光吉が描き、こちらの巻は中院通村が詞書を書いています。源氏物語手鑑は80枚のうち、前後期で8枚ずつ16枚が展示されたそうです。やまと絵の技法による非常に細かい描写が特徴で、金銀箔をぜいたくに用いた華やかな絵でした。詞書の書かれた料紙も大変美しくて、料紙を見る楽しみもありました。
円山応挙は「写生図」と初出陳である「老松鸚哥図」が展示されていました。先週、放送大学の面接授業で応挙の写生について詳しく学んだばかりでしたので、その授業のおさらいのような気持ちで見ました。描くことが大好きだった応挙の写生図はどれも本当に素晴らしい画力で、見たものを正確に描き写しています。また、老松鸚哥図は応挙らしい松の枝にとまっているインコが首を傾げている様子が写実的に描かれていて、はっきりとした赤と緑の色が、この時代には珍しかっただろうと思いました。応挙は、この異国の鳥をどこで見たのだろう、などと想像を巡らせたりもしました。
拓版摺りという版画技法で描かれた若冲の「乗興舟」です。長い巻物で、前後期で半分ずつの展示だったようです。モノクロの世界なのですが、中間色のグレーも美しくて、とても幻想的な舟の旅です。若冲と一緒に舟で旅をした大典顕常が短辞を詠んだそうです。
こちらは浮世絵です。源氏物語を題材に描いたもので、三代歌川豊国の意欲作です。浮世絵ではありますが、やまと絵に寄せて描いていて、面白いです。さきほどご紹介した源氏物語手鑑と同じ場面を選んでいますので、比べてみて下さい。
こちらの若菜下は、柏木が女三宮を垣間見するシーンを描いています。女三宮、めっちゃ見えてるやん…柏木もめっちゃ近くまで寄って行っちゃって…。
こちらの写真はクロチクの植栽で、120年ほどの周期で花を咲かせる植物なのですが、なんと今年、開館以来初めて花が咲いたのだそうです。写真だと分かりにくいかもしれませんが、ベージュ色っぽい花が確かに咲いているのです。珍しいものを見られて良かったです。
特別陳列の他に、常設展示として西洋近代美術の名品の部屋もあり、そちらは撮影禁止でしたがモネの「睡蓮」やルノワールの「花飾りの女」、ルオーの「女ピエロ」などを見ました。
同じ部屋に広重の「広重ブルー」をテーマにした錦絵の特集展示もあり、とても楽しめました。
こちらの美術館の西洋近代美術の名品展が、中之島香雪美術館で6月29日(土)~9月8日(日)に行われます。今日見た睡蓮など25点が並ぶそうです。そちらも楽しみにしています。