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マイベスト展覧会2023「佐伯祐三 自画像としての風景」

2023年も暮れようとしています。今年は新型コロナが5類に移行して以前のような生活に戻ってきつつある1年で、展覧会に足を運ぶ方の数もずいぶん戻ってきたと感じることが多かったです。コロナ渦中に開催予定だった展覧会が延期になり、今年あらためて開催されたものもありました。
私自身もこの何年かの中では今年はかなり多くの展覧会へ足を運んだように思います。その中で心に残ったものはいくつかありまして、今回 #マイベスト展覧会2023 の企画に参加させていただき、なかなかベストを一つ選ぶのは難しかったのですが無理やり絞ってご紹介いたします。

4月から6月にかけて、大阪中之島美術館で行われた「佐伯祐三 ― 自画像としての風景」です。まだnoteを始めていない時期でしたので、記録としてインスタにアップした記事をリンクしておきます。


佐伯祐三は最初の渡仏の際にヴラマンクを訪ね、そこで自作の作品を見せたところ「このアカデミックめ!」と罵倒され、そのショックで自分の画風について試行錯誤し始めます。そんな時に描いた自画像が、この「立てる自画像」です。顔の部分が削り取られています。彼の、自分とはどういう人間なのか、自分の本当の画風とはどんなものなのか、その苦悩が現れていると感じました。見ているこちらにも、佐伯の強い衝撃が伝わるような絵だと思いました。

立てる自画像

佐伯は30歳で亡くなってしまいます。もしも、ヴラマンクに会って罵倒されることがなければ、彼はどんな画風の画家になっていたのか、何歳まで生きていられたのか、など、つい考えてしまったりもしました。若くして亡くなった作家の作品を見ると、とても切なく、哀しく、いろいろなことを考えてしまいがちです。

この展覧会を見たことがきっかけで、神戸市のBBプラザ美術館の講演会を聴きに行きました。この時の記事はnoteに書いています。

この講演会で、講師の大阪大学名誉教授の橋爪節也先生が「大阪中之島美術館には常設展示室がない」というお話をちらりとされて、そういえばそうだな、せっかく佐伯祐三やモディリアーニなどの洋画はもちろん、近代の大阪の日本画家の作品もたくさん所蔵しているのだし、常設展でも見せてほしいものだと思いました。

それぞれのベスト展覧会、毎日面白く読ませていただいています。このような楽しい企画を考えて下さったちいさな美術館の学芸員さん、ありがとうございました。

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