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なんでもハキハキと話す掃除のおばちゃんの正体
入院5日目。
毎朝ベッド周りを掃除してくれる人がいる。病棟の中でいちばん威勢のいい、なんでもハキハキと話すおばちゃんである。
あわただしくも何かしら必ず話をしてくれる人で、「朝5時半には出勤している」という言葉が気になって何時に起きているのか? と尋ねたら「4時」。早い。
じゃあ家は遠いのか? と尋ねたら、「上賀茂のほう」。……上賀茂?
自分も上賀茂だと言いそのまま話を続けていると、あまりにも〈双方の家周辺の景色〉が近しくなってくる。あまりにもというか、それはほとんど同じ景色だ。特にあの辺に住んでいるか特段の用事でもない限り、〈あの角〉を曲がることはまずないだろう。
遂にすべての手を止めてドキドキしながら見つめ合っていると、懐かしい同級生との再会のごとくひらめく。
あ、知ってる! 花をほめてくれる!?
あ、わかった! 外人さんと暮らしてる!?
(花じゃないの!?)
同じ町内どころか同じ組内の、なんとまあ数軒向こうのご近所さんだった。これまで親しい付き合いこそなかったが、近所でいちばん威勢のいい、なんでもハキハキと話すおばちゃんだった。
不思議な出会い直しに驚きつつ、その人は大袈裟な小さな声で「○○さんにだけは元気って伝えとく」と、(恐らく守秘義務を守る態度を見せて)カーテンを閉じた。もう皆知ってるし元気でもないんだけど、とてもユニークな人なのだ。
これは何かがおかしいと今日の担当看護師にもズケズケとどこから来ているのか? と尋ねると、スウィング近くの中学校のすぐそばだった。
こちらはまあまあ。