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続・JEEPを買うと人はこうなる
男らしさに過剰な憧れを抱き、はじめて出会う孤独感に戸惑い酔いしれたあの頃。
え~っと、つまり中学2年生頃。
同級生たちの多くが、まるで必然のようにハマり崇拝していた存在、それが長渕剛だった。
新しいCDが発売されれば、競うようにチャリンコを走らせ本屋へと向かい(CDって何で本屋で売ってるの??)、CDラジカセの前で期待に胸を膨らませた。時に『とんぼ』の大合唱がどこかの教室から聴こえてきたかと思えば、100円玉を入れるシステム時代のカラオケに足しげく通い、やはりそこでも「あまりにも男らしい」曲の数々を皆が熱唱していた。
けれど「長渕剛が好きだった」。
この告白に一抹の恥ずかしさを感じてしまうのはなぜなのかしら??
ところで長渕剛に『JEEP』という曲(アルバム『JEEP』(1990)収録)があり、あまり泥臭くなくって当時からとても好きだったのだが、沼田・JEEP・亮平(以下、J)がおよそ3ヶ月前にジープの購入を決めて以来、僕の脳内には二十余年の時を経て、この曲が時々軽やかに流れるようになった。
さて、Jのジープの一件はその後どうなったのか?
遡ること7月6日(月)。
彼が東京のとある販売店から「通信販売」で購入したジープは(一応)無事に納車された。「コロナ第2波で死ぬ」という強い自己暗示により、通常時の100億倍の勢いを手にしたJ。その勢いで高く高く飛び跳ね、「見た目以外すべてデメリット」(J談)という夢のジープを遂に手に入れたのだ。
通信販売だから実物を見るのは納車時がはじめて……というデンジャラスな買い物。
納車までにも顔の見えない相手と超イロイロあり、Jが期待と共にかなりナイーブな日々を送っていたのはスウィングの多くが知るところだが、彼のこのエピソードに勇気づけられた人も多いようだ。
彼が悠々と高級車を買ったのではなく、コロナ禍の最中、そのコロナ禍を利用してポジティブな大ジャンプをかましたことに。
無謀であっても大ジャンプはとりあえず成功したのだ。納車後のJはさぞやウハウハだったことだろう。
が、さすがはJ。僕の型にハマったありきたりな想像はすぐに引っくり返される。
彼はその日、夢のジープを10キロ程度走らせただけで、すぐに家に帰ったと言うのだ。
なんでなんで?? せっかく丸1日休み取ってたのに、「ウキョー!!!」って叫びながら走り倒したんちゃうの??
Jは語る。
「そのつもりだったんですが、突然自分の体調が悪いことに気づいたんです」
……どういうこと??
「めっちゃ緊張してたみたいで。家に帰ってゲーゲー吐きました」
ゲーゲー……。
鮮やかな大ジャンプに伴う緊張とプレッシャーが、彼自身にも気づかないほどであったとは……。
どこまでも味わい深く、人間臭い男だ。
ちなみに今現在、Jのジープのフロントダンパー(確かサスペンションの一部)には凹みがあるため、振動やショックを吸収しにくく、ハンドル操作にも支障が出ているらしい(危険!)。また、ラジエーターに砂と石が詰まっており、エンジンが冷えずにオーバーヒートしてしまう恐れがあるらしい(だから危ねー!)。……なんじゃそりゃ。……メチャクチャな状態で納車されとるやないか。
今回、Jがその身をもって教えてくれたことは多いが、最も大きな教えはこれだろう。
クルマの通信販売にはくれぐれも気をつけよう。
修理はようやく、明日だそうだ。