絵本の政治
○○党は他の政党を愚かだと言う。
同じように○○党を支持する人は他の政党を支持する人を愚かだと言う。
△△党は他の政党を愚かだと言う。
同じように△△党を支持する人は他の政党を支持する人を愚かだと言う。
以上を政党の数だけ繰り返す。
ほどなく全員がひとり残らず愚かであることが分かる。
○○党は自分たちの主張がいつも正しく、他の政党は根本的に間違っていると言う。
同じように○○党を支持する人は他の政党を支持する人は信じられないくらいに間違っていると言う。
△△党は自分たちの主張がいつも正しく、他の政党は根本的に間違っていると言う。
同じように△△党を支持する人は他の政党を支持する人を信じられないくらいに間違っていると言う。
以上を政党の数だけ繰り返す。
ほどなく全員がひとり残らず間違っていることが分かる。
ようやく気がついた彼らは恐る恐る行動に移る。
「ごめんなさい。これまで自分自分言ってゆずらなくって。実は私たちはココとココとココと、それからココとココも苦手なんです。庶民の生活なんてもう笑っちゃうくらい分からなくって。だから威張って偉そうにしてごまかしてきたんです。どうか助けてくれませんか?」
「いえいえ、私たちも反対反対言って怒り狂ってごめんなさい。実は理想とアイデアだけはたくさんあるんですが舵取りなんかしたことないからチビっちゃうくらい自信なくって。だからとりあえず大声出してごまかしてきたんです。腹を割って話し合いませんか?」
うむ。枕元に置きたい絵本のような展開になってきたが、現状を見る限り決してこうはならないだろう。
絶望しながら参加し続けることは大切だが、こんなふうに期待しているだけでは世界は朽ちてゆくばかりだ。
では私たちは無力なのか?
そうだと思う。でも力があるからやるのでは政治家と変わらない。
少しでもいいから期待の矛先を、政治家によるいかにも政治っぽい政治から、自分たちにできる小さな政治に向けるべきだ。
無力さを知りながら身近な誰かを大切にし、お互い様に支え合うささやかな営みを、目に見える日常の中で積み重ねてゆくこと。
それこそが本当の政治。
ささやかなれど難しく、生きている政治。
絵本に描かれるべきはこっちのほうだと思う。