見出し画像

展覧会:詩人と画人 -人生後半戦の歩き方[ゲイジュツ編] 開催のお知らせ

詩人と画人 -人生後半戦の歩き方[ゲイジュツ編]-

好きなようにかきなさい



障害のある人が働く福祉施設<スウィング>では、2008年より芸術創作活動「オレたちひょうげん族」をスタート。

2013年、向井は53歳のとき、XLは46歳のときにそれぞれ詩作と絵画制作をはじめた。

何でもとりあえずやってみるタイプの向井は「ボクにも書けるかなあ」と軽くペンを握り、握った先から非凡さを発揮した。下ネタと人生の悲哀を往き来する作風も当初から。心身の不調でスウィングを休むことの多い人だったが、休んでいる間も自宅で書き続け、書きためた詩はしばしばスウィングに封書で送られてきた。

XLはもともと何事に対しても自己防衛が強く「できん、ムリ、やらへん」が口癖。もちろん表現活動にも5年以上背を向け続けたわけだが、あるとき<描かなければいけない>状況に身を置いてしまい、脂汗をかきながら描いてみちゃったら吹っ切れて、正に人が変わったように描き続けて早10年超。XLの頑なだった自己防衛は「お前にはできない、ムリ、やるな」という社会からの圧力、知的障害者に対する差別や偏見によって生じていたのだろう。事実、向井には10年間の精神科入院、XLには15年間の引きこもり生活という厳しい過去がある。

ゲイジュツによってふたりは救われたのか。それはどうだかわからないが、少なくとも紙に向かうふたりの充実した表情を僕たちは目にし続けてきたし、そこには人生100年時代の後半戦を生き抜くヒントが垣間見える。

明るい第2の人生がクローズアップされる一方、定年退職した途端に何をやったらいいのかわからないとか、生きてはいるけど寝たきりで何もできないとか、良し悪しは測りかねるがそうした人たちも数多いのが現実だ。

では詩を書き、絵を描いてみてはどうだろうか。急かされるようにジムで身体を鍛える必要もなく、仲間探しにやっきになる必要もなく、ただ紙とペンさえあれば、誰の目を気にすることなく、自分だけの世界を自由に生きることができる。なんて、なんて、安上がりで魅力的なのだ……。

2023年10月にこの世を去った向井が遺した言葉をここに記し、本展の入口としたい。

こどもらにもかいてほしい 好きなこともつらいことも かいてほしい 

かくのが大事 親に言いたくないこともあるやろ? 別にまちがえてもいいねん 

好きなようにかきなさい 自分の見せたい人に見せたらいい                         

(向井久夫詩集『好きなように』より引用)


主催者代表 木ノ戸昌幸

スウィング25回目の主催展覧会、スウィングを代表する詩人・向井久夫と画人・XLの2人展を開催する。

ショウガイシャとしての2人ではなく、それぞれ53歳、46歳からゲイジュツをはじめたおっさんの生き方に人生100年時代を生き抜くヒントがあるのではないか、全然ないかもしれんけど ― そう考えて企画した。

会場となる「スペース響野」(埼玉県狭山市)は、「オオツカ商店」(アンティーク時計や篠笛販売)や「入間清流塾」(学習塾)の一角にある(あるそう。まだ行ったことがないので……)レンタルスペースだ。

主宰されているのは大塚岳史さん。大塚さんの生業としての仕事は学習塾経営なのだが、多角的に、お金目的ではない仕事を展開しておられ、こうしたスタイルにはスウィングとの親和性を強く感じる。

また、大塚さんの生き方自体もこの展覧会の趣旨に呼応している。

大塚さんは僕が長年参加している和太鼓集団「婆沙羅」の元代表で、約2年前にご両親も亡くなられて誰もいなくなったご実家に戻られ、人生後半戦を再起動させた。この決断に当時、僕たちはとても驚いた。大塚さんはいつまでも婆沙羅の不動のリーダーだと思っていたし、生活の保障なんてなんにもないチャレンジだったからだ。

かくいう僕自身も人生後半戦に差しかかり、気力体力の衰えを感じつつ(更年期障害を確信しつつ)、さあこれからどうやって生きてゆこうかなあと思い惑いながら日々を送っているおっさんのひとりだ。2人の作品は誰が見ても楽しめるものに違いないが、人生のこれからに迷える人のヒントになったり、余計な緊張がほぐれて「先のことなんてどうせわからないんだから!」と、いい意味でのヤケクソに変わるような場になればいいなと思う。

会期初日、11月16日(土)には46歳から絵を描きはじめ、49歳から似顔絵描きをはじめたXL本人も登場します(似顔絵、描きます)。ぜひぜひご来場ください!

Swing Exhibition #25
展覧会:詩人と画人 -人生後半戦の歩き方 <ゲイジュツ編>-

■ 会期:2024年11月16日(土)-11月24日(日)
12:00-16:00 ※16日(土)のみ17時まで

■ 会場:スペース響野 
埼玉県狭山市入間川2-3-6(狭山市中央図書館下る「オオツカ商店」内)

■ 関連企画:XLの超デフォルメ似顔絵:もしもあなたがプリミティブだったら。。。
日時:11月16日(土)13:00~17:00/おひとり1,000円/ご予約不要

■ 主催・企画:スウィング http://www.swing-npo.com/
■ 共催:オオツカ商店 https://ft-ootsuka.com/
■ お問合せ:スウィング(担当:河原)
Tel:075-712-7930/Mail:kawahara@swing-npo.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?