展覧会『blue vol.2 ― 捨てられないものが 物語ること』のお知らせ
捨てられないものが 物語ること
なんで東九条なんですか?
インタビューの最中、ふいに発せられた言葉に身を固くした。それは東九条に多くの研究者やアーティストが訪れ、活動を重ねる現状を嬉しく思う反面「でも一体なぜ、ここへ来るのか?」という、本質的な胸えぐられる問いだったからだ。
スウィングにもいろいろな人がやって来る。一方的に「ハンディのある人に何かをしてあげたい」人たちも含めて。無意識の優位性、善意という名の暴力にはただ困ることしかできない。
僕たちに傲慢さはなかっただろうか。実際、<たくさんのいろいろな人たち>と出会い、知り合えるような思い違いを抱いていたように思う。が、たかだか2年という歳月のうちに時を共にできた人はさほど多くはない。当然だ。「東九条に関わっている」などと言いながら、結局のところは<出会えた人にしか出会えていない>。
本展開催に際し、僕たちは沈黙し悩み続けた。展覧会という場を生み出すことの意味すらも疑った。答えは、いや答えに向かう道はしつらえた数日間のイベントではなく日々の中にある。顔を上げて続きを歩むために自らの内側に向き合った結果、この機を通して出会った人のことをもっと知りたい、もっと知ってほしいというシンプルな気持ちに思い至った。
公的空間に<捨てられたもの>を拾うゴミコロリを通じて出会ったのは、東九条に働き暮らす人ばかりではない。どこかに線を引くのをやめようと考え、地域、年齢、職業など様々な12名に、それぞれの私的空間で<捨てられないもの>についてインタビューを行った。
<捨てられないもの>という共通の、けれど完全に異なった語りに耳を傾ける時間は豊かで濃密で……いや、言葉を選ばなければ、何がこんなに面白いんだろうと戸惑うくらいに面白く、「人は皆面白く、生きていればそれでいいのだ」という思いが胸に溢れる。そこに垣間見えるのは、その人の生きてきた証であり、生き様であり、その人生の一端だ。「多文化共生」とはこれから目指す夢ではなく、既にあるもの。僕たちが出発点とした仮説に思いを馳せる。
文化の最小単位は「個人」である。
本展が絶対的に固有なひとりの人の、唯一無二の文化に触れる機会となりますように。
NPO法人スウィング
木ノ戸昌幸
昨年『blue vol.1』に続く、『blue vol.2』展のお知らせです。
2020年5月、京都・東九条にてコロナ禍でも唯一できることとして清掃活動「ゴミコロリ」をはじめて2年、25回。
が、上記ステートメントにも書いた通り「現場」で感じることが全てだと思うようになり、本展の企画立案は難航しました。難航……言い換えればカッコつけようとしてたのかもしれません。
だから自分たちの足元とささやかな手応えだけを見つめ、大きくも小さくもならず、身の丈に合った展示にしようと考えました。
決めてしまえば後はやるだけ!!
もっと知りたい、知って欲しい。ゴミコロリを通じて出会った多種多様な12人への<捨てられないもの>についてのインタビューは、これまでに経験したことのない感動的な時間となりました。
人間は全員面白い!!!
プライベートな空間にお邪魔し話を聴き、尚且つその場にゴミブルーのまま在れたのは、やっぱりこの2年の積み重ねの賜物だなあと感じました。11番目にご自宅でインタビューした、もうすぐその家を引っ越すという前端紀(まえ・みずき)さんは、「ゴミブルーがいるだけでこんなに変わるんですね。いい思い出ができました」と笑ってくれました。
この忙しない年度末に心良くインタビューに応じて下さった12名の皆さんには感謝の気持ちしかありません。
本当に本当にありがとうございました。
僕たちの軌跡と心震えるインタビューをどう伝えるか?
12人の極私的<捨てられないもの>。プロジェクトを共にした成田舞氏による12人&ゴミブルーのポートレート写真、片山達貴氏によるインタビュー映像(今回、ゴミコロリの映像は一切使わず! せっかく撮ったのに!)。<捨てられないもの>(撮影:成田舞/片山達貴)をスウィングの面々が描いた絵画。さらに会場内には到底収まり切れなかったインタビューの全貌をインタビュー集として編集・制作、来場者の皆さんにお渡しします。
ほぼ1ヶ月(しかも年度末)という期間に1冊の本(インタビュー集/60P)をつくるという無謀な試み。
やや生活を破綻させながらなんとか先日校了しましたが、『blue vol.1』に続きデザインを担当していただいた鯵坂兼充さん(iTohen)には、無茶な依頼に付き合っていただき心より感謝しています。制作は坪井さやか(スウィング)。校正は田中秀明(スウィング)。突然降ってわいた仕事に粘り強く、鬼の集中で向き合ってくれた2人にも感謝です。そしてコロナ給付金を、この1冊に丸々投じてくれた増田政男大先生(ゴミブルー/スウィング)、ありがとうございました!
以下「THEATRE E9 KYOTO」のWEBサイトより本展企画内容を転載します。
昨年開催『blue vol.1』展(2021.3.20-29/THEATRE E9 KYOTO)の続編企画となります。
NPO法人スウィング(京都市北区)は2020年5月より、<「多文化共生」とはこれから目指す夢ではなく、既にあるもの>という仮説を出発点に、東九条(京都市南区)にて清掃活動「ゴミコロリ」をスタートしました。コロナ禍にあっても唯一可能な試みとして。勝手に生み出したローカルヒーロー『まち美化戦隊ゴミコロレンジャー』(全員ゴミブルー)として。
当初ゲリラ的に展開したこの活動は次第に形を変え、京都市 地域・多文化交流ネットワークサロンの協力や京都ダルクとの出会いにより、今では誰でも参加可能な定例イベントとして定着しています(2022年2月現在:24回)。
本展では公的空間に<捨てられたもの>を拾うゴミコロリを通じて出会った、地域、性別、年齢、職業など様々な12名の人たちに、それぞれの私的空間で<捨てられないもの>についてインタビューを行い、その記録を映像、写真、絵画として多層的に展示します。
文化の最小単位は個人です。本展が絶対的に固有なひとりの人の、唯一無二の文化に触れる機会となれば幸いです。
ゴミブルーと絵:NPO法人スウィング
写真:成田舞
映像:片山達貴
広報デザイン:鯵坂兼充(iTohen)
舞台監督:夏目雅也
音響:宮田充規
照明:渡辺佳奈
企画:木ノ戸昌幸(NPO法人スウィング)/成田舞/片山達貴
協力:京都市 地域・多文化交流ネットワークサロン/コミュニティカフェ ほっこり/希望の家カトリック保育園/認定特定非営利活動法人 京都ダルク/東九条アーカイブ班
主催:NPO法人スウィング
提携:THEATRE E9 KYOTO
「E9で展覧会をしませんか?」
2019年夏。あごうさとしさん、蔭山陽太さんに声をかけてもらいはじまったこの歩み。
ひたすら人に恵まれ小さな一歩一歩を重ねてきましたが未来は予測不能。本展がこんな風になるなんて誰ひとり想像できませんでした。本展終了後も「東九条ゴミコロリ」は続きますが、<続き>への通過点をぜひご覧いただきたく思っています。
Swing×成田舞×片山達貴 blue vol.2
― 捨てられないものが 物語ること
会期:2022年3月19日(土)~27日(日)13:00~18:00
※ 最終日のみ16時まで
※ 入場無料・ご予約不要
会場:THEATRE E9 KYOTO 京都府京都市南区東九条南河原町9-1
お問い合わせ:
NPO法人スウィング 京都府京都市北区上賀茂南大路町19
Tel:075-712-7930/Mail:swing.npo@gaia.eonet.ne.jp
THEATRE E9 KYOTO 京都府京都市南区東九条南河原町9-1
Tel:075-661-2515/Mail:info@askyoto.or.jp
皆さまのご来場を心よりお待ちしております。