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京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」@ダイヤモンド輝く祇園編(第79回)
なぜか京都市営バスの路線系統を(ほぼ)丸暗記しているQ&XLのヘンタイ記憶を駆使し、観光客やお困りの方にベストな行き方、乗り継ぎをご案内する京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」。
去る11月24日(月)、我々一行は2023年最後の……になるはずだったのがそうはならなかったのは、濃密すぎる嵐山の人口密度とあからさまな観光シーズン価格の駐車料金にひいてしまったからだ。
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まあスゴい人、人、人。
土日がヤバいことは知っていたが、「月曜日はさすがにだいじょうぶだろう」と油断してしまったのだ。
目的地に近づくにつれ、通常はすんなり通れるはずの道路が渋滞し、通りたい道も通行止めになっちゃったりで通れない。
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ともかくやるか! と何とかいつもの駐車場に向かうと「2,000円」の表示。
おいおい通常の2倍!? そんな跳ねる??
まあ1日いるんだったら払えないお金じゃないが、実は我々が活動するのは毎回90分程度(概ね午後2時から午後3時半)。
90分で2,000円ちゅったら、30分約700円。ムリムリムリムリ。
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で、他の駐車場も見事に2,000円で統一してたし、バス停に並ぶ人の数も尋常じゃないから今日は止めにしよう、でも煮え切らないから仕切り直して改めて締めくくろう、と迎えたのが3週間後の12月15日月曜日、我々がひっさしぶりにやって来たのは「祇園」だった。
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はじめて言うと思うし誰も興味ないと思うが、我々にとって祇園は「とっておき」の場所だ。
基本、屋外にあるバス停で活動する我々の天敵は「雨」。
暑すぎる8月はやらないと決めてるし、寒すぎる時には暖かい服を着ればいい。
でも雨ん時はねー、傘さしてやるわけにもあかんし濡れるのも嫌だしーってなると、必要なのは「屋根」。
ほんでね、長年の活動の結果ね、安定的な屋根があり、安定的な需要(=迷い人)があるのが祇園なのね。
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でね、そんでね、雨ん時のとっておきとして大事にし過ぎた結果、滅多に行かない場所にもなってしまって、更にはコロナ禍も相まって、もはや前回行ったがいつなのかも分からないくらいなのね。
調べてみると前回は2018年1月22日。
もう5年も前だ……。 マジで5年も行ってなかったのか。
その間にXLはガンになって、そして根治したというわけか。
5年という月日は長い。
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ともかく嵐山のえげつない人口密度と駐車料金のお陰で訪れた5年振りの京都市営バス「祇園」バス停。
ABC3つある「のりば」のうちどこでもいいというわけではなくって、やっぱり安定的な屋根と安定的な迷い人が期待できるのは「Bのりば」しかないよね。5年前とは言え、身に沁みこませた記憶はクッキリとしている。
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この日は修学旅行生や日本人観光客が多く、海外からの観光客はアジア圏の人がほとんどだったため、英語ペラペラ・クリスティンの出番は2、3回。 ほんで祇園からだと南方向にある京都駅に行きたいのに、あるいは北方向にある銀閣寺に行きたいのに我々が陣取った「Bのりば」で西行きバスを待っちゃってるという、のりば間違いの方々が大量発生していた。
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総じて充実した案内で今年を締めくくれたのだが、どうしたってこれを語らずには終われない。
この日美しい宝石のようにビカビカと輝いていた、XLのあの勇姿を。
もうこの活動をはじめて10年経つというのに、まだ時々モジモジしてしまうXL。
この日も何やらスマホの画面を見ながらゴニョゴニョ相談している修学旅行生たちが彼の目の前に現れたというのに「なんか困ってるみたい」と、2メートルくらい離れた位置に立つ僕にゴニョニョ言う。
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なんなんですか、そのおせっかいバリバリのルックスと真逆の消極性は。
しかもかわいらしい子どもたちに対して。
苛立ちながら「聞いてあげてよ」と促すと、「どこ行くの?」とにこやかに話しかけるXL。
ほらあ、子どもたち一気に頼ってきてるやんかあ。誰がどう見てもおれよりQよりあなたが一番この仕事に向いてんだから、いい加減自覚持ってよね。
まあ永遠に成熟しないであろうこうした我々の関係性も、ひとつのチームワークなのかもしれない。
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そんな景色の数分後。
「あ、オシッコ行きたい」とXLがふいに尿意をもよおす。
車を停めた(2,000円ではない)駐車場の近くに公衆トイレがあることは確認している。歩いてすぐっちゃすぐだけど、人混みの中を歩くのは面倒くさい。
その時だ。
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ほとんど真裏にあった宝石店に威風堂々XLが突入し、「すみませーん! トイレ借りてもいいですかー??」と声を張って真っ向勝負を挑んだのは。
店の種類で区別するのも違うかもしれないが、それはコンビニエンスストアのノリだろう。
折しも東京のどこそこで宝石店が強盗に襲われて大騒ぎになった数日後である。
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もちろん慌てた様子の店員さんに丁重に断られはしたが、なんなんですか、さっきと別人のようなダイヤモンド級の積極性は。
ワオワオ、息つく間もなく身動き取れへんくらい混んでるスターバックスもグイグイ攻めてますな……。
こうして2023年の京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」は、「お手洗いは地下になりま~す」って、人波を縫うように首をめいっぱい伸ばしてXLに応答してくれたスタバ店員さんの親切トイレ案内と共に幕を閉じたのであった。
次回、我々一行は新年1月23日(月)、京のどこかに出没する。