変わらないあそこ
集中的なリハビリテーションを目的として、現在入院中の祥子さん。
体のためとはいえ、およそ1ヶ月の入院生活は寂しいだろうと、代わる代わるスウィングから会いに行っている。さらに先日は外出の許可を得て、ドライブがてら外にお昼ご飯を食べに行ったり、特別な数時間を過ごした。
最後に向かったのは(あやちゃんが事前に調べをつけていた)かの名勝、大原・三千院近くのカフェ。祥子さん、甘いものが食べたかったらしい。
大原にはしばしば訪れるが(というより通り過ぎるが)、どストライクな観光エリアに来るのはひさしぶりだ。
カフェに向かって曲がりくねった細い道をゆっくりと登っていると、後部座席であたりをキョロキョロと見渡していたミサさんが懐かしそうな声をあげる。
「ああ、なんかあそこ知ってるぅ!」
ミサさんは「子どもの頃に1回だけ」この付近を訪れたことがあり、そのときに入ったお店か何かを見つけたようだ。
変わってゆくものばかりの世の中で、変わらないものって大事だよね。
まだボンヤリとした思い出を取り戻そうと、記憶の糸をウンウン一生懸命に辿るミサさん。やがて「あ!」と表情が華やぐ。時を超え、遂に過去と現在が接続されたらしい。
「ああ、わかった! たぶんあそこや!」
一歩も進んでないやないか!!
あそこて、どこや!!
変わらない、大切なものがここにもある。
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