ルール?展に行ってきたぜ! 其ノ弐?
<前夜の混乱>
11月11日(木)午後7時過ぎ。
とにかく僕たちは10時間の道中を無事にノロノロと走り切り、今回の宿泊先である友人(みーちゃん)宅に到着した。
下町にあるみーちゃんちは、それはそれは快適でリラックスできて、周辺の環境も「ここが東京???」と思うほどに穏やかで、でも死んでなくって新しいものだけを良しとしない気概が感じられた。
東京に来ると毎回刺激的だけれど激しく消耗してしまう。でもここは違う。
沼田君は後に21_21 DESIGN SIGHT(「ルール?展」会場/以下21_21)含む六本木の押し寄せるラグジュアリー感にメンタルをやられてしまって調子を崩してしまうんだけど、「あそこが滞在先でなければ死んでました」と帰りの車中で語っていた。死ななくてよかった。
がしかし! 長旅の疲れを癒すかのようなまったりとした夕食の終盤、Q氏欲望オンステージは唐突に幕を開けたのである。
腹が減り過ぎて異常な量を買い込んできた沼田君セレクトの多種多様な食材に囲まれ、そろそろ明日の予定を詰めておこうかとなったそのタイミングを突いて彼は語りはじめたのだ。
カラオケに行きたい。秋葉原に行きたい。アイドルグッズを買いたい云々。
ルール?展にしか行かないと約束した出張なのに何を言ってるの?
「前の出張のときにカラオケに行ったから今回も行くのかなあと思って」
いや、それもう8年以上前の話でしょう……。
「来るまでは思ってなかったんだけど、東京に来たら急に秋葉原に行きたくなって」
いや、それ絶対来る前からイメージしてたでしょう。なんでそんなウソつくのよ……。
ルール?展だけを目的にした出張だから少々時間に余裕はある。だからアイデアを出すのは、まあ自由だ。そして自由な時間をどう過ごそうがそれも自由だ。 が、カラオケはひとりで行くのは寂しいから嫌だと言い、秋葉原に行くのには金がないと言う。
そりゃそうだ。12月まで小遣いナシの約束(そうしないと生活が破綻するから)で、あなた2日前にUSJで数万円使っちゃったんだから。
だからルール?展見てから、みーちゃんち近くの銭湯行ってみんなでゆっくりして、それから晩ご飯行こう?
「いや、お風呂入る日じゃないし」
それなら、みーちゃんちで(山ほど持って来た)ゲームしたりしたらいいよ?
「…………」
<見えない戦い>
思い通りにいかなければ、いつどこででも叫び出しかねない心熱いQ氏である。
彼もメンバーのひとりだった前回の東京出張は確か4年ほど前だったか。居酒屋で大好物のだし巻を注文したら人気商品でもう売り切れで、でも(もちろん売り切れ前に注文されていた)他の席に運ばれるそれを目撃して突如大声を上げ、広い店内を瞬時に深い静寂に包み込んだ圧倒的な魔力は記憶に新しい。
そのとき僕たち以外の時間が本当にピタリと止まったのだ。
一瞬すべてが制止し、そして何事もなかったかのように再び動き出したのだ。
しかしながらQ氏の名誉(?)のために言えば彼も相当に苦しんでいた。いや一番つらかったのは彼なのだと思う。
とどまることのない欲望をコントロールできず、現実的にどう折り合いをつければいいのかも決められない。できれば<絶対に代わりたくない>くらいの地獄に違いない。
「ルール?展を見ることだけが目的の出張」ではなく、彼の雪崩のような欲望の入る余地のない、もっと仕事として分かりやすいスケジュールや枠組みを示し切れなかった僕にも大きな反省がある。
今回ばかりは「ルール?」じゃなくってバチバチのガチガチのルールが必要だったってことなのかあ。でももう手遅れ! ポリポリ。
笑い事ではなく実際はこの噓つきが~!! という思いと自分自身の反省と、ともかくモヤモヤの落としどころをどこかに見つけないと、最悪唯一の仕事場所であるはずの21_21で大魔法が炸裂するぞ……という焦りとの戦いだったのである。
<全員ポンコツ>
実際この、冷戦のような見えない戦いはジリジリと次の日まで持ち越され、予め21_21に伝えていた約束の時間に遅れる一因となった。
一見何事もないのに、精神的にはガチガチに拘束されている時間は相当キツく、誰もが消耗する。
が、遅れた要因はもうひとつあって、XLが普段は飲まない、でも大好きな牛乳を朝食としてガブガブ1リットル(バカ?)飲んでしまってお腹を思い切り下してしまい、何度もトイレタイムを必要としたのだ。
言うなれば京都人力交通案内の主役2人が、片方は心ピーピー、もう片方はお腹ピーピーになっちゃったってことかな?
ついでに3人目の僕は頭ん中がピーピー。沼田君は地元民・みーちゃんが「〇〇で乗り換えだよー」とか親切に言ってくれてるのに、なぜか眉間に皺寄せ路線図とにらめっこしてたりしてたから、順調にいつも通りにパニクっていたのだろう。
到着前からやっぱりスゴいぞ! 全員ポンコツ!
道中もQ氏の葛藤とその整理作業は続き、もちろんXLの下痢も続き、21_21に着いた頃には、そりゃあそこそこグッタリ。
まあでも、ともかく無事に目的地に着いたのだ。まだ何もはじまっていないような気もするが、ルール?展に来るってこんなにも難しいことだったのか。いやあ、はるばる来た甲斐があったなあ。
が、目の当たりにした「ルール?展」に対して抱いた印象や感想はそれほど良いものではなく、僕の頭ピーピーはより混迷を深めることになったのである。
(まだ続くの?)