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クソちっぽけな窓

ふと、ちな本人はどう思っているのだろう? と気になって、「ちなって自閉症なん?」と尋ねてみる。

ちなは不躾な男に睨むような鋭い目つきを向け、いつもの独特の、断固とした口調で言い放つ。


「自閉症ちゃうな!」


強い。
彼女は少しの知識がありさえすれば、世間一般で言うところの「自閉症スペクトラム症」と簡単に分かるタイプの人である。

が、ちなは「私は私である」とはっきりと宣言している。 

「私という人間を、そんなクソちっぽけな窓から眺めるのは止めんかい! お前はお前ちゃうんか? お前が自分をどう思おうと知らんけど私は私じゃ! ケツまくって顔洗って出直して、人のことはええから自分の人生もっかい真剣に見つめ直してみい!」と力強く言っている。……言ってるかな? 実はここまでは言ってないような気がするけど、ひょっとしたら言ってるかもしれないから、言ってる言ってる言ってる言ってる、言ってることにする。


「自閉症ちゃうな!」

 
ともあれこれこそが、本当だと思う。

人は、自分自身でも気づかないくらいに多面的な存在である。

分かりやすいものにばかり目を向けていては、そのすぐ隣や裏側にあるものにすら気づけない。ある一面を軽んじていいわけでもないが、同時に一面はただの一面に過ぎない。

ことに「専門家」なんて言われる人たちは、「クソちっぽけな窓」から人間を見つめた気になって悦に入り、その人全部を決めつけてしまう傾向が強いようだ。

それはもはや悪癖とさえ言える。
ならば一度、そんな悪癖はきれいさっぱり捨ててしまった方がいい。

専門家ちゃうな!


 



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