見出し画像

『ドライブ・マイ・カー』を絶賛しない

映画『ドライブ・マイ・カー』が世界を、賞レースを席巻している。

「世界」が示す範囲も曖昧だし、(ミスコンとかとは違うと思うんだけど)「賞レース」もその良し悪しは微妙。

が、ともかく自分自身が心震わせた映画だったなら、この盛り上がりに歓喜するのは自然な感情だと思う。

やったぜ! ドライブ・マイ・カー!! おれの心もドライブしてるぜ!!(?) 

けれど、むしろ僕は戸惑っている。この世界中から向けられている賞賛に、異様な盛り上がりに。

心惹かれるキービジュアル。大好きな村上春樹原作。一度も観たことのない濵口竜介監督作品(『ハッピーアワー』観たい)。

迷わず観に行った。眠かったので寝ちゃうんじゃないかと心配してたのが、寝ずに最後まで観た。

僕は例えばどんなにエラい人の講演なんかでも、それが自ら前のめりに座った最前列であっても、つまらなければよだれを垂らして寝てしまうという悪癖を持っている(が、自分の話で寝られると傷つく)。

映画も然りだ。が、『ドライブ・マイ・カー』で寝落ちすることはなかった。少し泣いた。いい映画だった。でも僕にとっては「それぐらい」だった。ただのひとつの、良質な映画だった。

つまり言い換えれば、こんな大フィーバーするような映画のようには全く感じられなかった。

水を差したいわけではない。でもこうしたズレた意見がどこか言いづらい。

「分かっていない、見る目がない」と思われるのが、「みんな」と異なったことを表すのが怖いのだろうか。

いやいやこの社会に、SNSに、違う意見を「認めない」ような圧力があるのだろうか。

いずれにせよ、どこか気持ちが悪い。(探せばあるのだろうが)もっと異論反論あっていいはずなのに、いいことしか聴こえてこないのはなんか気持ちが悪い。何より自分自身の感情に蓋をするのは致命的に相当マズい。

7歳の頃に観た『E.T.』にはじまり、映画に救われ続けた人生だ。が、少なくとも今の僕には『ドライブ・マイ・カー』の何がそこまいいのかさっぱり分からない……という自分の声をここに書いておこうと思った次第。ドライブ・マイ・センス(え??)。

いいなと思ったら応援しよう!