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続・健やかなる失踪

増田さんの失踪癖について書いたのが2020年5月。

その後これまでに少なくとも2回、彼は順調に、突然いなくなった。

……ちゅーことはおよそ3ヶ月に1回のペース。

いい感じのペースだ。

そして煙のように消えてしまった彼を探し回る人はもういない。

なぜなら増田さんはそういう人、長くとも2、3日もすれば必ず帰ってくる人、そうしたある種の「信頼感」がいつしか僕たちの中に芽生えてしまったからだ。

つまり彼の失踪はもはや「当たり前」であり、そんな「当たり前」にいちいち動揺したり心配しないことが、僕たちの新たな「当たり前」として定着したようなのである。

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こうなって来ると、事態はますます不可思議な方向へと転換しはじめる。

誰にだって何もかもが嫌になって、姿を消してしまいたくなることくらい、あるに違いない。

でも、それを現実として行動に移すのはかなり難しい。だってきっと、誰かにすっごい心配をさせてしまったり、迷惑をかけてしまうから。それになんか、取り返しのつかないことをしてしまうようで普通に怖い。

けれど増田さんはそうした恐れをぶっちぎって、「消えたい」という自身の本当の声に、忠実に従うことができる!!

すると、いやあ増田さんはすごい、なかなかできるもんじゃないという評価の声や羨望の眼差しが次第に広がり、「いつでも勝手に消えてください!」とか「消えるときには誰にも言わないでください!」という期待にも似た、(意味不明だが)妙に華やいだ声が飛び交いはじめたのである。

こんな風にポジティブに言われてしまうと、失踪することへのハードルは自ずと下がってしまうのだろう。

消えるのは消えるが後ろめたさを伴わず、堂々と胸を張って消えられる。

昨年12月の忘年会、“予定通り“彼が消えたことは既にさらっと書いた。

が、その直前に何が起こっていたのか? 最近になって分かったことがある。

増田さんは失踪前、仲のいいミサさんにこう言づけたらしいのだ。


「先に帰るから、みんなに言っといて」


いやいや、これってもうただの「早退」じゃない???

引きこもりも失踪も許容され、いつしか普通の早退にまで降格させてしまった増田さん。

彼がこのまま終わるはずはない。次は一体どんな手に打って出るのだろうか。

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