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ワクチン差別にサヨナラの花束を

僕自身の2回目ワクチン接種のちょっと前、暗い顔をした西川君から聞かされた知らせは信じがたいものだった。

「2回ワクチン接種を完了している人に限り、支援回数を通常に戻しましょうか?」

詳しいことまでは書けないのだが、こうした提案(?)が、とある組織から打診されてきたというのだ。

お金の管理に難しさがあって困っている人がいて、その困り事を少しでも軽減しようとするサポートの仕組みがある。

この仕組み自体は素晴らしい。必要な仕組みであり、でも決して当たり前にあるものではないと思う。

利用するのも人間、サポートするのも人間なのだから、その在り方はいつも試行錯誤の繰り返し。

エラーもよく生じる。人間は機械ではなく、そして完璧なシステムなんてものも存在し得ないんだからそれでいい。

しかしながら緊急事態宣言発令下では通常どおりの支援が行われず、非常時のルールとしてその回数が減らされている。

通常1週間に一度の人も、2週間に一度の人も原則月に1回。もちろんスウィングのメンバーも例外ではない。

困っている人が、通常どおりの支援が受けられないと当然もっと困ってしまうわけで、「それで支援なんて言えるんですか?」という思いがないわけではないが、様々な状況や事情を鑑みての決定なのだろうから仕方がないことと受け入れてきた。

そして本当に必要な人に対しては、緊急事態宣言下であっても通常時の支援が継続されている。

これは大きな安心材料だ。本当に困ったときには、ちゃんと守ってくれる。

しかし今回の気味の悪い発案は一体どう受け止めればいい??

「2回ワクチン接種を完了している人に限り、支援回数を通常に戻しましょうか?」

戻せる人は通常の支援回数に、との思いは理解できなくもない。しかしその判断基準がワクチン接種の有無であっていいわけがない。人間は機械ではなく、そして完璧なシステムなんてものも存在し得ない……が、これはまるで機械が弾き出したアイデアのようじゃないか。(現に言ってきたわけだけど)こんなこと、本気で利用者に伝えているんだろうか?

既に「ワクチン差別」や「ワクチンハラスメント」と呼ばれるものが問題視され、その拡大を警戒する声が毎日のように聞こえてくるというのに、まるでそれが善意の、状況を改善するいいことであるかのように語られたことにも僕たちはショックを受けた。

どんな利用者も困っているからサポートを必要としているわけで、その多くは(本当はそんなことないんだけど社会的には)「弱者」と呼ばれる人たちである。

ワクチン接種は個人の自由。そして受けたくっても受けられない人だって大勢いるだろう。

ただでさえ弱い立場にある人を、更に弱い立場へと追いやるような扱いが許されていいわけがない。

あまりこんな綺麗な言葉は使いたくないのだが、四の五の言わずに「いちばん弱い立場にある人の生活や権利に徹底的に寄り添うこと」を最優先事項にしなければ、支援も社会もより一層クソファッキンになってしまう。

そして差別というのは、(特に差別をする側が)その事実に「気づきにくい」という性質を持つ。人間はそんなに強くない。

だからこそこうした基本姿勢、拠って立つことのできる哲学のようなものが本当に本当に大切になる。

「2回ワクチン接種を完了している人に限り、支援回数を通常に戻しましょうか?」

僕は混乱と怒りのあまりにアワアワなりながら関係各所に連絡をしまくり、ワクチン差別に憤りながらワクチン接種を受けるという奇妙な状況を経験することになってしまった。

既にその日のうちに組織のトップから謝罪と、このような差別的な対応を取らないことの知らせがあった。

エラーは誰だって起こす。時には大きなエラーも起こしてしまう。僕もエラーだらけの人生だ。

でもそこに開き直ってしまうのも違うのだと思う。特に人を傷つけてしまうようなエラーはできれば繰り返したくない。

そのためにはエラーを見つめ、ちゃんと認めること。そして周囲は誰かが起こしたエラーを他人事にせず、カバーすること。カバーし合うこと。

僕らはそうやって何とかかんとかやってゆくしかない。

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