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つまり、そういうこと。「胃の形が腹のなかで自覚できるほどに固まる」

物事を文章で伝えるという技は、いつの時代も悩ましい技術だったんじゃないかと思う。これこそ、永遠の人類の課題、至難の業といえる曲芸なのかもしれない。

春爛漫。社会人になった新入社員たちは、あと半年もしないうちに、自分たちの伝えたいことが上司や相手に伝わらないことに悩むだろう。私も、プロジェクトが変わるたびに、みんな同じフォーマットで話していくようにどこかで教われば楽なのに…なんて、なんともちっさいことを思ったことがある。
学生の頃はおいしいものを食べたら、満面の笑みで「美味しい」と言っていれば良かったとしても、新人アナウンサーは食リポで、「美味しい」一言では仕事がこない。どこにそんな引き出しがあるのかとびっくりするくらい、彼らのそれもまた一つの技術なんだろうな。

食事の情景や、食べ物の表現、景色の表現、人物像の表現、しぐさの表現、心情の表現…
どれをとっても表現すること、伝えることは難しい。
ふと、偶然推薦されたベストセラーと呼ばれる本を読んだ。昔の書籍であり、訳書なため、なんとも読み進め難い。その書籍の一節に、こんな表現があった。

胃の形が腹のなかで自覚できるほどに固まる

「胃がもたれる」という表現は、こんな風に表すこともできるのか。
まさか、内臓の表現なんてこれまで考えたこともなかった。
もともと身体の変化に疎いもので、足がむくむという事象すら、社会人になるまでわかっていなかった。
なるほど。もたれるとはこういうことか。

いや、待てよ。
もしかしたら、私はまだ若いのかもしれない。
「胃がもたれる」ということを経験していないのかもしれない。

なんて、ちょっと自分を弁明してみて、きょろきょろと周囲を見渡してみたり。

気になる言葉、魅力的な言葉を集める共同マガジン「コトバツムギ」を始めました。共同運営者は以前ライティングスクールで一緒に学んだもりやみほさん。私は、月~土までのうち、火・木・土を担当しています。

文章にあった絵を書いてくださる方、募集していたり。していなかったり。