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日常を絵のように捉える「自分の現況にめでたいという輪郭を与えていく。」

だいたい10歳くらいの誕生日。
母親にプレゼントでお願いしたのは、丸ペンとインクだった。

当時、私は漫画家になりたいと思っていた。ランドセルの中には、自作の漫画を描いた自由帳を常に入れて、読んでみてと周りの友達に読んでもらっていた。
当時は、毎日のように図書館に通っていて、図書館で借りていた漫画家になるための本を借りては、健気に書写していた。

だが、好きなものはとことん描くのだが、苦手なものは全くと言っていいほど描かなかった。
当時の自由帳を開けばわかるだろう。ほとんどの登場人物が、左を向いている。
そう。私は右向きの人物を書くのが苦手だった。
バランスが悪く、輪郭が取れない、なんとも不細工な人物になってしまうのだ。


世の中、突然の出来事に対して、脳の理解が追い付かないことがある。コンテストで大きな賞をとったり、久しぶりの連絡かと思ったら知人の他界の連絡だったり…
前後数時間は、特別なことをしているわけでもなく、また、社会が大きく変わるわけでもない状況で、突然の状況を脳の理解が追い付かないこともある。それをうまく表現している文章があった。

自分の現況にめでたいという輪郭を与えていく。

漫画家の鳥飼茜さんが、結婚した時の心情をブログでこう綴っていた。
概念を理解したり、抽象度の高いことを理解しようとするときは、まさにこの状況に陥るのではないだろうか。
まだ理解半ばの頃は、ぼやっとした状態で、徐々に見えてくるとはっきりとした輪郭が見えてくる。カメラのピントが合うということも似た表現だと思うが、漫画家がこんな表現を使うと、不思議だ。
まるで、日常の感情一つ一つを絵として捉えているかのように錯覚する。


結局、幼少期の私は漫画家になることは早々に諦めた。
あれだけ懸命に使っていた丸ペンも、今ではどこに行ったのかわからない。
そんなに右向きが描けなくて匙を投げたのだろうか。
でも、大きくなってどこかから、漫画家も右向き左向きの得意不得意はあるらしいと知った。不得意な向きは、得意な向きを描いた後、紙を裏にしてペンでなぞるのだとか。
それ、知ってたらまだ漫画家を目指してたのかな。
いや、そもそもイケメンを描けなかったし、少女漫画の大きな瞳に途中で疑問を感じてたよな。



気になる言葉、魅力的な言葉を集める共同マガジン「コトバツムギ」を始めました。共同運営者は以前ライティングスクールで一緒に学んだもりやみほさん。私は、月~土までのうち、火・木・土を担当しています。

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スミヨ。
文章にあった絵を書いてくださる方、募集していたり。していなかったり。