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育休明け、「はたらく」と「子育て」の私の場合▷稲岡 由梨さん
今だから思い返せる、育休明け
この春、3月から連載を続けてきた、育休明けソーシャルワーカーのそれぞれのキャリア、今回は6回目です。
初めて子どもが生まれて、育休明けを迎えたり、仕事する時は、多少なりとも不安やもやもやを抱えがちなのではないでしょうか?不安の正体は、「やったことがないから、分からない。」に尽きるのでは?と思います。
はじめて利用する保育園や幼稚園のルール、かかわる先生、復帰後の職場、パートナーとの役割分担、職場の状況、自分自身の働き方や、考え方、などなど…。
これまで自分自身のことは、「こうしたいなぁ~」という一存で決められたことも、周囲や環境の状況に左右されることも多くなります。
でも案外、「こうしなければならない」というのは、ないのです。
自分の中で仕事と子育てなど暮らしとの調和を「自分らしく」図れるのは自分だけ。そのヒントとして、ソーシャルワーカーの「はたらく」と「子育て」をお届けします。
▷今回ご紹介するソーシャルワーカー
稲岡 由梨さん
社会福祉士・介護福祉士・相談支援専門員
就労支援や相談支援専門員の経験を経て、2023年5月福祉をもっと身近にし、'暮らしの中のふくし'を広げたい,と「街の相談室ほろん」を開設。2人の未就学児を育てる母親でもいらっしゃいます。稲岡さんの出産、育休、復帰、その後のキャリア形成はまさに自分自身へのソーシャルワークです。
産休中に取り組んだ社会資源の情報収集
私の出産は今から約5年前の36歳の時です。
仕事をしない生活というものが全く想像できず、「こんなに大好きなお仕事から離れられるのだろうか?」と不安を抱きながら「待ってるよ。元気な赤ちゃん産んで必ず帰ってきてね」と周りから温かいエールを頂き、職場のみなさんに感謝の気持ちを抱き、産休に入りました。
出産準備は1ヶ月短期集中で行いました。子育て教室に参加して準備物を教えてもらったり、呼吸法の勉強、産院のヨガやマタニティビクスに参加して体力づくりもしました。陣痛や出産の痛みがわからず不安でしたが「出産は本当に楽しいよ」と友人がさらっと言ってくれたことで気持ちが楽になったのを覚えています。
1番力を入れたのは復帰後に必要になる社会資源調査です。「情報だけでも早めに知っておきたい」と時間のあるうちに動けるだけ動きました。
特に保育園に関してはどこの保育園に入れるかという最も大事な意思決定をしなければいけなかったので、育児で忙しくなった時に結局情報を調べる時間が取れず自分が納得する保育園にいけないという状況は避けたかったのです。
(事前に調べて見学・登録をした社会資源)
・産前産後サポート施設
・小児科2ヶ所
・病児保育
・社会福祉協議会のファミリーサポートセンター
・保育園8ヶ所くらい(多い!!)
・出産後に参加できる子育て教室
・無料で遊べて子育て相談もできる「こどもプラザ」の見学
・出産タクシーの問い合わせ
保育園に関しては、
①家からの近さ、②園の方針、③園庭の広さ、④課内活動、⑤課外活動、⑥ミルクの種類、⑦制服の有無、⑧定員規模、⑨延長保育の時間、⑩給食の有無、⑪オムツ(紙・布)、⑫園開設からの年数
についてまとめ、「いいと思うところ」「気になるところ」を色分けした表を作成して家族とも共有。知人から「さすがソーシャルワーカー」と言われことを思い出します(笑)
この社会資源調査は、後々保育園を決める時に本当に役立ちました。
初めての出産は壮絶で感動的だった
そして出産予定日に破水して入院に。「もうすぐ会える」と待ち望んでいたのですがそこからが試練。子宮口がなかなか開かず薬を点滴でいれてもらっても陣痛が本当にゆっくりしか進まずその状態が約3日続きました。
隣の部屋の方は、陣痛→分娩台→出産とどんどん入れ替わってく中で私だけ取り残されたような気がして「いつ産めるの?」という状況。助産師さん、母、夫が陣痛室で支えてくれました。
破水から3日後、ようやく分娩室へ行き、1時間だけ無痛の注射を打ってもらった事で痛みが和らぎました。その時は医療の力はすごいと感動。そろそろ会えるかなと期待していた矢先、今度は赤ちゃんが通常と逆向きで出ようとしており出てこれないという問題が発生し、急遽「吸引分娩」に切り替えました。突然、院長が登場(笑)
私は医師、助産師5名くらいに囲まれ、赤ちゃんが出てくるようにお腹を押さえられました。1回目、2回目、3回目…まだでてこない。院長から「次出てこなかったら緊急帝王切開に切り替えます。」と言われました。「ここまできて帝王切開?でももうなんでもいい~!」と最後に200%の力を振り絞り、やっと赤ちゃんの泣き声が聞こえたのです。
今でもその瞬間の映像を思い出すと涙が出ます。
院長から「相当な難産でした」と一言。
ですよね。。
娘はとっても温かく「やっと会えたね、でてきてくれてありがとう」と抱きしめました。
過去に戻れるとしたら「計画無痛分娩」を選んでもよかったなと思います。
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初めての育児、3人暮らしスタート
最初の1ヶ月間は実家で過ごしました。妊娠後、仕事復帰のことも考えて実家近くに引っ越したので、夫もほぼ毎日実家に泊まるという生活。
夜の授乳、夜泣き対応は慣れるまでは時間がかかり、最初は夜中の孤独感が半端なかったですが、朝になると姪っ子、姉、父、母も抱っこをしてくれて「昨日は寝れた?」と毎日声をかけてくれるとても温かい環境でした。これがなかったら私は孤独感でいっぱいだったと思います。
夜にも癒しのオルゴールをかけるなど工夫しました。夫は、ミルクづくり、オムツ替え、沐浴と授乳以外は積極的に育児をこなしてくれました。元々妊娠前から共働きだったので家事の役割分担を特に決めておらず、「先に帰った方がする」「忙しそうだったら協力し合う」という流れがあったので育児も同じような感じでした。
結婚前から私はこどもを産んでも仕事はずっと続けるということを伝えており、夫もそんな私のことを理解し、「好きなようにしたらいい」とシンプルにお互いの意向を尊重しあえる関係性を作れていたのかな…と思います。
新婚時代は自分の価値観をいっぱい押し付けてしまい喧嘩になった時もありましたが…笑。
産後5ヶ月頃からは外出開始。多くの人と触れ合ってほしいという勝手な親の想いがあり、色々な場所に連れまわした記憶があります。私が人と話せる環境を意識的につくっていたことはメンタルを保つためにもよかったです。
また、気になる色の便が出たら小児科医の友人に写真を送り助言を得たり、保育士の友人に赤ちゃんの遊びについて聞く等、自分の周りで活用できる社会資源にいっぱい助けられました。ママ一人ですべて担うなんて無理。分からないことは専門家に聞いたり、お願いしたり、周りに頼るということが育児には何より大事ですね。
また、子育てサロンに参加したことで、初めてのママ友ができ、14組親子で花見をしたことも覚えています。一緒に成長を共有したり、悩みを共有する仲間を作ることもおすすめです。
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保育園が決まったものの、戸惑いも…
産休中の社会資源調査のおかげで保育園は第一希望の園に無事に決まり、産後8ヶ月でならし保育スタート、産後9ヶ月で仕事復帰。しばらくは時短勤務で働きました。日中は仕事、帰宅後は家事育児の日々。1日、1週間、1ヶ月が猛スピードで過ぎていきますが、戸惑いや不安が多い中でもやはり仕事してる自分が好き、自分らしいなと痛感しました。
専業主婦の母親から「こんなに小さいのに保育園なんてかわいそう」、専業主婦をしてる友人から「大変じゃない?」等と言われた事もありました。
最初はそんな何気ない言葉が引っかかり、
0歳で保育園に預けて働く事ってこどもにとってよくないの?
仕事復帰の時期早すぎたのかな?
と戸惑いもありました。
今では4歳になる娘。信頼できる保育園で伸び伸び育ち、しっかりと成長しています。「お母さんは困ってる人のためにお仕事してるの」と保育園の先生に話すようです。お迎えが遅くなり寂しい想いをさせてしまうことありますが、私の選択は間違ってなかった。
その時に戻れるなら「人それぞれ価値観が違うだけ、周りの言葉に反応しなくて大丈夫だよ。あなたのやりたいように進んだらいいよ」と声をかけてあげたいです。
復帰に向けての準備とその後
復帰前に準備したことは、宅配サービスの導入、発熱などの緊急時の支援体制づくり(実家、病児保育)でした。
オムツやトイレットペーパー等の生活用品、焼くだけ、揚げるだけの食材、離乳食などとても助かっていました。
時短家電のドラム式洗濯機乾燥機、食洗機、お掃除ロボットは1人目育休中はまだ考えられていなかったですが、今思えば準備していたらよかったと後悔してます。
緊急時は実家に本当に助けられましたが、両親が70代で高齢だったので、体力的に無理をさせてしまったところはありました。病児保育に間に合わない場合の対策としてもっと早くファミサポを活用すればよかったと思います。
また、今までと時間の使い方ががらりと変わる中、「マイノート」(かずみさん考案)を活用し、やりたいことを書き出して整理することも習慣化。
当時のノートを振り返ると「仕事と育児の両立を楽しみシンプルで健康的な暮らしをしたい」「家庭や仕事すべてに笑顔や明るさがあること」「楽しむことを全ての基本にしたい」と書いてありました
復帰後1年以内に2人目を授かり、現在は2児の母になりました。
2人目復帰後はキャリアについて色々と悩み、今は「自分らしい働き方」を作っていくために、この春独立して相談室を立ち上げることになりました。
マイノートに書いてあるテーマは今でも変わっていません。仕事も育児も本当に楽しくて、今この時間を大切に生きることができています。
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○「街の相談室ほろん」HP
○個人note