子育て中の「暮らしと思考回路とキャリアの整理収納」
ソーシャルワーカーのキャリア、というテーマで考える時、話題にのぼることの多いテーマの1つが、「子育て中の仕事と暮らし」です。
今日は2人のソーシャルワーカーの経験を「暮らしと思考回路とキャリアの整理収納」についてのヒントになれば、とご紹介していきます。
忙しいからこそオススメしたい、頭の中の整理収納
子育てや介護など、もっというと趣味や習い事や付き合いなど、仕事や家庭や自分のことまでやっていると、いくら時間があっても足りない方は多いと思います。
私(森)は育休中、マンションの1室で寝不足で辛い時、社会人になりたてで仕事以外暇やな~と特に生産的なこともせずゆるゆるとしていた自分を思い出し、その頃の余裕のある私がワープして、今の私を助けに来てほしい…という妄想を本気でしていました。
赤ちゃんから1歳半くらいになるまでの乳幼児は変化の連続。睡眠不足や社会から孤立しがちな状況の中で、季節が変わり、子どもも大きくなり、新しい服の必要、初めての離乳食、保育園の申し込み、とやったこともないことを意思決定しなければならない場面が次々と出てきました。
すべてが初めてのことなので、調べながらひとまず目の前のことに対応すると、今日も日が暮れる、という感じ。あるのはエンドレスに続く子どもへの対応と生活リズムに合わせた家事の対応、自分の睡眠不足やネガティブになりがちなメンタルのコントロールへの対処です。
私の場合は、子どもがいる生活への知識不足と、普段はアバウトだけど、気になり始めると過敏になってしまう自分の性質も相まって、人よりも少し敏感になってよりしんどさを感じていたかもしれないと思い返します。
そうこうするうちに、仕事復帰の春がやってきました。一旦自分なりに色々と整え、家の中の効率化もし、準備はしたものの、復帰すると変わるのはとにもかくにも「使える時間」でした。
以前の自分が顔を出す
子どもが生まれて仕事復帰をしたときに、仕事だけで考えると、私個人としてはそんなに大きな状況の変化があったわけではありませんでした。それは私が元の職場に復帰でき、元々管理職に近いポジションだったこと、お休み中同僚がコミュニケーションをとってくれていたことで、ある程度安心感を持って復帰させてもらえたからです。
一方、子どもを預けて働くというのは初めての経験で、預けたとき泣かれないだろうか、とか必要物の準備、先生との報連相などは初めてで、こんな感じか、と1つ1つに少しの戸惑いがありました。初めのうちはそこで心のキャパシティをそれ相応に使ってしまいます。
仕事だけで考えると職場でやれる仕事が急激にできない能力になったわけではないのです。出勤して仕事モードONになれば、やれる。もっとやれる想像もつく、…でも無理してやれない状況にはある。でも、これまでだって困難はあったし、なんとか工夫すればやりくりできるのではないか、と思っていました。
その後私は様々な効率化に精を出すわけですが、結果としては効率化した時間にできることを詰め込み、バーンアウト寸前に至ります…。子どもが生まれたあとに、自分の限界やキャパシティを理解した上で改めて仕事へのスタンスを作り直すという視点が不足していたわけです。
心をラクにした、整理収納の考え方
私は子育てと仕事の両立について、最初は「効率化」で乗り切ろうと思っていました。
ただそれには限界がある。時間も体力も限りがある。そしてそもそも自分の「器」に限界があるとようやく気づきました。子どもが3歳になるちょっと前くらいです。
器、というのは人間的な心の大きさもだし、使える時間、思考できる頭の体力などのことです。
当然ながら、今ある枠の中を超えて、その中に入れ込むことはできません。ぎゅうぎゅう詰めにしても使い勝手が悪い。程よい余白があるからこそバランスがとれる。
24時間という時間の中で子育て・仕事・家事・自分のことをしようとすると、どう考えたって時間がありません。その中でどうやったら自分らしくやっていけるのか。それは自分の中での「優先順位を明確にすること」でした。
優先順位を決める。「今」大切でやりたいことは何か
色んなことを同時並行に考えると、あれもやりたい、これもしなきゃと、エンドレスになりがちです。でもその考えを全部書き出して整理してみると、頭の中が見えてきます。そして書き出したものを、
1.苦手だし手間になってほんとはやりたくないこと
2.とってもやりたいけど、なかなか手をつけていないこと
3.時間があったらいつかやりたいこと
4.今やる必要があって、すぐ終わるもの
と、分類してみるといろんな種類の考えが混ざった状態でぐるぐるしています。時間がない以上、1.に関してはサービスを利用して他者にやってもらったり、思い切って「やらない」と意思決定する。
2.4.に関しては優先順位を上げて手をつける。
3.に関しては今考える必要がないと判断して、先送りしてもよい。
という風に、優先順位について整理するとやらないくていいことをやらないことで余白が生まれ、やりたいことをやることでQOLがあがります。
こんな風に自分にとって何が大切か認識できることは、働き方、キャリア形成にも大きく影響してきます。
今の自分で、ちょうどいい暮らし方、働き方をつくっていく
★森の場合
私は、保育園を使う、専門性を生かして働く、けど長期的に体力のことを考えたら最初は時短勤務、という希望がありました。
なぜ自分が働くのか、どう働きたいのか、なぜ時短にするのか整理しておけば、それを上長に伝えることができ、自分を生かせる働き方を自分も上長も共通認識を持って作ることができます。
これが整理できずに、ひとまず復帰はするけど時短で、という伝え方にとどまると、以前のようには働けないんだろうな、と思われてマミートラックにはまってしまうかもしれません。
もちろん、こちらの努力ではどうにもならない会社の事情、上司の無理解、社会の雰囲気、アンコンシャスバイアスなどは存在するので、そううまくはいかないかもしれません。
ただその中でもどう自分の自己実現をしていくかは、自分の意志がないと実現しにくい。自分を守るためにも、自分自身について整理しておくことはとても大事だと気づきました。
私の場合は、子育て、自分自身が管理職に近いポジションであったこと、パートナーの仕事が多忙など他にも色々な要素がある中、その後フリーランスという働き方を選んで今に至ります。
私の優先順位は、今のところ
専門性を生かして働く
生活にも無理をしない
の2つです。もちろん今でも理想のバランスがとれず悩むこともあります。今後状況が変われば、ばりばり働いてお金を稼ごう!とか、また学校で学ぼう!とか新たな選択が出てくるかもしれません。その都度考えて変わっていけたらいい、と思っています。
★大瀧の場合
私は現在、年中の娘と0歳の息子がいます。娘が10ヶ月のときに保育園に預け、気づいたらワーママ歴も5年目。
1人目出産時、私は病院のMSWとして勤務し育児支援に携わっていました。
育児支援に関わっていたこと、職場で産休育休取得が初めてだったこともあり、
・ソーシャルワーカーだからちゃんと育児しないと
・後輩ソーシャルワーカーのためにも仕事と育児を両立しないと
こんな想いで日々過ごしていました。
しかし、現実は上手くいくものではなく、だんだんと仕事も育児もいっぱいいっぱいに。
・出産前のように働けない
・大切な打ち合わせに参加できない(8時と18時が多かった)
・患者家族を1人で担当するため、子どもの熱で休むと迷惑をかける
・寝不足が続き、子どもや夫に対してイライラ
描いていた理想とは違う生活。
その時に私がしたことは二つです。
1.大切にしたいことを明確にし優先順位をつける
私の場合、「家族も自分も笑顔で過ごすこと」を実現するための優先順位をつけました。
<キャリア>
・フルコミットして働くために、通勤時間を短縮したい
・チームで働ける環境がいい
・人やコミュニティと関わる業務に携わりたい
このように整理したうえで、それが叶う職場に転職しました。また優先順位は子どもの年齢が上がると変わっていくこともあるので、中長期でも優先順位を整理すると、今できることが明確になっていきます。
またキャリアは生活の一部分であるため、育児や家事も含めて、生活全体の優先順位も一緒に考えることで、何を優先したら良いかも見えてきます。私の場合、この時に改めてパートナーとの役割も見直しました。
2.自分自身の気持ちを大切にする
ソーシャルワーカーとして育児支援に関わっていたこともあり、私自身の出産子育てを、支援者の立場としてもみてしまうことがありました。
・子育てが上手くできない
・疲れて泣きたくなる
・子どもと向き合えない
など、沢山の葛藤と様々な感情がでてきました。今でもあります。
このような感情がでてきたときに、支援者としてではなく、1人の新米ママとして気持ちを大切にすることで楽になりました。
私はバイステックの7原則の”統制された情緒的関与の法則”が好きですが、ソーシャルワーカーとしても、ママとしても大事にしていきたいマインドです。
子育てしながら働くこと。正直、悩みも葛藤も多いです。一方で楽しいことも沢山。
私らしく働き続けるためにも、今後も優先順位を都度整理し、家族と向き合いながら試行錯誤をしていきたいです。
▽ この記事を書いた人 ▽
・森 和美
精神保健福祉士/公認心理師
大学で心理学を学び、社会人になってから養成校で精神保健福祉士取得。
就労継続支援B型/就労移行支援での支援、福祉系企業の人事を経てフリーソーシャルワーカーに。6歳児の子育て中。
・大瀧 聡美
社会福祉士/精神保健福祉士/保育士
大学で社会福祉士を取得し、その後精神保健福祉士・保育士を取得。営業職、病院でのソーシャルワーカーを経て福祉系企業のサービス開発に携わる。5歳児・0歳児の子育て中。
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