小説 「Bad Trip」 3
途中でエレベーターに乗って来る者も無く、無事にオレンジビルの1階ロビーにたどり着いた。ロビーには誰も居らず、それが逆に怖く感じられた。
「とっとと出よう。」
間宮が僕に言った。
「そうだな。」
監視カメラが付いているのはわかっているので、僕たちはなるべく目立たないように、ゆっくりと慣れた感じでビルの出口へと歩いていった。
意外なくらいあっさりとビルから出ることができた。まるで200階で起こった出来事が嘘のようだった。
オレンジビルを出ると吹雪は少し収まっていた。僕たちは西の方向へ、早歩きで歩いた。20分ほど歩くと、だんだんと人が増えてきて、繁華街が近づいてきた。年末の街は賑やかで、屋台や飲み屋などにも客が入っている。
僕たちは客のいない屋台の裏へ行き、ビルとビルの間に入り、持っていたマリファナ煙草に火をつけた。一本を回し吸いをし、少しキマった状態になった。まどろんだ街の滲んだ光を眺めながら、ゆったりと歩いた。ラーメン屋の屋台を見つけ、席につき、2人ともネギラーメンと餃子を注文した。
「このネギがヤバいんだよね。」
その後会話もせず、ただラーメンと餃子を貪り食った。
今いる辺りは、比較的治安が安定したエリアで、長稔の1階級市民の住む地域である。
一流のブランドショップも多くあり、はっきり言えば、金持ちたちの遊び場だ。
地上部(第1世界)でも治安の良い地域と悪い地域があり、先ほどまでいたオレンジビル周辺はマフィアも多く、一般人はあまり寄り付かない治安の悪い地域である。
『K共和国』は、長年食糧不足に悩んでいた軍事国家であったが、近隣諸国との和解後、各国から食糧支援を受け、軍事費に回っていた資金はインフラ整備、産業開発に使われ、経済は発展した。国は活気づき、首都である長稔は世界でも有数の都市となった。
しかしそれでも、地下天井部(第2世界)と地下下層部(第3世界)は存在する。第1世界の光が強い分、第2、第3世界の影は濃くなっていった。結局貧富の差が生まれ、金を持たない者は下へ下へと追いやられていった。
食事を終えると、僕たちは、繁華街を再び西の方向へと歩いた。第2世界への入り口のゲートは、長稔の街の西の端にある。しばらく歩くと、人が疎になり、廃墟と化したビルやマンションが少しずつ現れはじめた。長稔に限らず、都市には必ずこのような場所がある。
道端で横になって震えているいるホームレスに、
「タバコは無いか?」
と声をかけられたので、タバコをやると、先ほど、高級車が列を成してゲートの方へ向かったと教えてくれた。NETbRAINのライブの客だろうか。考えたが判断がつかなかった。
(続く.........)
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