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木漏れ日
「木漏れ日って素敵な言葉ね」
「そうだね」
「なんでか知ってる?」
「なんで?」
「木漏れ日の木っていう字をコって読むから」
「へぇ」
「だって普通は木をコなんて呼ばないから特別でしょ」
「木立ちもあるね」
「木立ちも特別だよ」
「木の葉もあるよ」
「じゃあ、理由変えてもいい?」
「いいよ」
「漏れるって普通は悪い感じがするでしょ。お漏らしとか水漏れとか漏洩とか。でも木漏れ日だけは漏れてもいい感じがするから」
「そうかもね」
「やっぱり、この世で漏れても素晴らしいって思うのは光くらいかな」
「本当は何が漏れても良いはずだよ。我慢は良くないからね」
「あなたは?なんで素敵だと思う」
「こもれびっていう響きが、なんとなく秘密みたいな感じがするからかな」
足元の輝く光を見つめながら、ふたりは木漏れ日の下を歩いた。