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女性が「支配」を取り返すことが正解?【エッセイ:未来のためにできること】

長い人類の歴史の中で、さまざまな形で自由を取り上げられてきた女性たちの苦しみを振り返るとき、こんな言葉たちが思い浮かぶ。

「支配」「抑圧」「束縛」「暴力」「格差」

社会の中で息ができない、同じ地球で生きているはずなのに酸素が足りない。そんな息苦しさをこれまでに世界中で何人が味わってきたんだろうか。今、この瞬間にも、どれだけの人が苦しんでいるだろうか。

もちろん、歴史を振り返れば改善したこともたくさんある。でも、あからさまな部分が少し身を潜めただけで、支配と抑圧の構図は健在だ。

私が大人になってから社会の流れが少しずつ変わり、「女性の社会進出」とかいう旗を「SDGs」や「ワークライフバランス」など、他の薄っぺらな旗と合わせて掲げる会社が増えている。

今日この記事を書こうと思ったのは、ふと女性が「社会進出」することって、これまで男性が占めていた支配的な立場や地位、富を取り返すことだろうか。だとしたら、それって…と違和感を覚えたからだ。

「社会進出すること」と「支配すること」の違いってなんだろう。

これまで逆境の中で凄まじい努力してきた人を否定したいわけではない。ただ、目指すべき平等とは(男性に代わって)女性が支配的立場に立つことだろうか。認められるためには男性の何倍も努力しなければいけないというプレッシャーに打ち勝つことだけが、正解だろうか。

主婦として子どもを育てることが夢だったのに、「今どきではない」と否定される人もいるだろう。

本当は家族と一緒にいたいのに、無理をしながら重要なポストに就いている人もいるだろう。

女性だからという理由で当たり前のように産休育休を取って、いつの間にか社内で弱い立場になってしまった人もいるだろう。

喉から手が出るほど欲しい仕事を、家庭の事情で断る人もいるだろう。

努力して昇進したのに、女性だから選ばれたんだと言われて辛い人もいるだろう。

そう言われて、実際に自分が実力で昇進したか分からなくなってしまい、苦しむ人もいるだろう。

非正規雇用の低収入で苦しんでいる人もいるだろう。

収入が低いから、離婚できない人もいるだろう。

数えきれない女性が、現代でも苦しみを抱えながら生きている。

どんな選択を取っても、不平等の構図は変わらず、不条理や違和感が付いて回る。何を選んでも不正解な気がして、そんな社会に進出して意味なんてあるの?そんな思いが私の頭をよぎる。

私たちは搾取や競争の結果として生まれる格差を「実力主義」をベースに正当化し、強者が弱者を支配することが当たり前のシステムを作ってしまった。そして今、温暖化や地球規模の格差拡大、貧困の増加など、様々な形を持ってシステムそのものが限界を示している気がする。

怒りたくなることもたくさんある。支配を取り返したくなることもある。でも、仮に女性が男性と同様の平等な権利を手に入れたとしても、多くの強者が手に入れた地位に固執するように、取り返した権利を守ることに必死になってしまうだろう。そして、その結果、自分よりさらに弱い立場にいる人を搾取し、不平等に加担する側になりかねない。いやもう実際にしている。

上に立たないためにはどうしたらいいだろう。

可能な限り、他者を支配、搾取しない生き方をするためには、どんな選択をすればいいだろう。

多様性を認め、生き方の選択肢を増やすにはどうしたらいいだろう。

格差に目をつむってはいけない。勇気ある声に耳を塞いではいけない。違和感に口を閉ざしてはいけない。そう思う自分ももちろんいる。ただ支配や抑圧、損得感情の正当化、見栄の張り合い、実力勝負の社会に疲れてしまった自分もいる。そう、ただ疲れてしまっている。周りにも疲れてしまった人がたくさんいる気がする。

支配ではなく謙遜、抑圧ではなく協調、束縛ではなく自由、暴力ではなく対話。これが私たちを苦しみから救う唯一の道。それならば、それに向かう営みで支配を取り返すことは、真逆に進むようなものだ。

そう、「女性の社会進出」なんていう旗はもう古いのだ。最終的に地球人全員が負ける戦から撤退し、立場に囚われず真の平和を目指して協力する時がきている。支配する立場、支配される立場からすべての人を解放し、今あるリソースを循環させる新しい営みを模索することに向かっていこう。

私ひとりにできることは少ない。弱気になったり、強気になったり、絶望したり、希望を感じたり。頭の中は忙しいけれど、これから先も悩み続けるのだろう。辛いことも多いけど、向き合い続けること、対話を続けることを諦めたくないと心から思っている。

※この記事では、「男女」という二元論的な枠組みで社会について考察・記載しましたが、実際の「ジェンダー」や「性自認」はより多様で二元論では表現できない領域であることを補足しておきます。

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