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本当の私を解って
その日、ウサギとカメは軽いお散歩のつもりで戸越銀座を訪れていた。戸越銀座駅にある案内板を読んだウサギは、いきなり目をぱちくりさせた。「戸越銀座って、東京一長い商店街なのね。全長1300メールもあるわ」
気合いを入れ直した二人が、最初にたどり着いたのは「おめで鯛焼き本舗」というお店だった。「お好み鯛焼きが人気みたい」とカメが言うと、「新製品の広島風お好み鯛焼きっていうのもあるわよ」と、ウサギが指をさした。「迷うね…」と悩むカメの横で、ウサギはキッパリと、「両方ください」と、お店の人に告げた。
「お好み鯛焼きの中身は、キャベツと豚肉とマヨネーズだね。見た目は鯛焼きだけど、味は好み焼きだね。でも、皮の部分は鯛焼きだから鯛焼きの味もするよ」とはカメの感想。
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「広島風お好み鯛焼の中身は、溢れるほどの焼きそばと豚肉ね。皮の部分は玉子だから、形が鯛焼きで、味はお好み焼きという感じかしら」ウサギはそう言うと、ふと鯛焼きを包んでいた袋に目を留めた。
「たい焼きの食べ方で分かる性格判断が書いてあるわ。カメくんは尻尾から食べていたわよね? 尻尾から食べる人は、異性に恋されていても気づかぬことが多く、片思いに悩むタイプ、だって。やっぱり性格判断は当たるのね」とウサギは笑った。
「どれどれ、僕にも読ませて。ウサギさんは頭から食べていたよね? 頭から食べる人は大ざっぱな楽天家。熱しやすく冷めやすい…?」カメが静かに目を上げると、ウサギが無表情でじっと見つめていた。
「それで…? カメくんの見解では、その性格判断は正しいのかしら?」ウサギが棒読みで言葉を繰り出すと、カメは考える振りをしてゆっくりと後ずさりした。彼の動きを見抜いたウサギは、素早く彼を捕まえた。
「今のことは、忘れよう」と、身動きが取れなくなったカメは、ひと言つぶやいた。
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