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彼の名は「ミスター」

「おはようございます!『ウサギのティースプーン』のお時間です」小さなラジオブースの中で、ウサギはいつものように元気な声で番組を始めた。

「次の質問は、ラジオネーム『歌うのは苦手なカメさん』からです。『ウサギさんがカラオケで歌う曲はなんですか?』という質問をいただきました」

「いろいろあるんですけど、やっぱり一番はこの曲ですね。ラストの絶叫が心にぎゅっと刺さるんです。それでは、今日の一曲目をお届けします。私の推しメン、YOASOBIで『ミスター』!」

銀座駅コンコース

「実はこの曲、原作が島本理生さんの小説『私だけの所有者』なんですよね。アンドロイドの少女が、彼女の“所有者”であるミスターに恋をする物語なんです」ウサギは優しい声でリスナーに語りかけた。

「少女の揺れ動く恋心が、この曲ではめまぐるしい転調で表現されていて、それがたまらなく切なくて」気がつくと、ウサギは思わず熱く語っていた。

YOASOBI

「みなさんは、どんな曲を歌っていますか?ぜひ教えてくださいね」リスナーから届いた、想いが詰まった曲たちが、リズムに乗って軽やかにラジオから流れ出していった。

「実は、私、狭いところは苦手なので、歌う時はいつも河原なんです」ウサギは少し恥ずかしそうに話し始めた。

「でも、広い場所で思いっきり声を出すと、本当に気持ちがいいんです。それに、お花や鳥たちが聞いてくれているようで、テンションがめっちゃ上がります!」

GINZA SONY PARK

「質問、ありがとうございました。カメさんも苦手なんて言わないで、楽しく歌ってくださいね。それでは、また次回をお楽しみに!」ウサギは軽やかに番組を終えた。

「昨日、YOASOBIのパネル展を見てきたから、その余韻で思わず推しちゃったわ」放送を終えたウサギは、スタジオの静けさに包まれながら、ふっと微笑んで呟いた。

ウサギはさっと立ち上がると、スタジオのドアを勢いよく開けて外に飛び出した。そして、「ミスター」を口ずさみながら、図書館で待っているカメのもとへ駆けていった。

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