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二つの観覧車が回る夜
「ねえ、見せたいものって何?」
ウサギは首をかしげながら、カメの目をまっすぐに見つめた。「もしかして、イルミネーションが始まったの?」ウサギの問いかけにカメが頷くと、彼女の瞳は夜空に小さな星が瞬くように、きらりと輝きを帯びた。
「いつのまにか、そんな季節なのね」
ふと顔を上げたウサギの目の前に、キラキラと眩しく輝く遊園地が広がっていた。
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ウサギは胸の高鳴りを抑えきれないまま、煌めく景色に視線を注いでいた。ふと観覧車を見上げると、小さく首を傾げた。
「あれ、観覧車が二つに見えるわ。私、もしかして乱視なのかしら?」
「そうじゃないんだよ」カメは、目の前のプレートをそっと指差した。「今、この遊園地には観覧車が二台あるんだ」
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「大観覧車とSky-Go-LANDって…どういうことなの?」ウサギは目を丸くしながら、驚いたようにカメの方を振り返った。
「ひとつは1980年からここにある『大観覧車』で、もうひとつが、できたてホヤホヤの『Sky-Go-LAND』なんだよね」
カメはまだ状況を掴みかねているウサギの手をそっと引きながら、大観覧車に向かってゆっくりと歩き出した。
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「見て!観覧車に乗ってるのに、あっちにも観覧車が見えるわ!」ウサギは窓の外を指さしながら目を輝かせた。
「やっぱり、乱視じゃなかったのね」
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観覧車が一回りすると、その余韻を胸に抱きながら、二人は隣の観覧車へと歩き出した。「観覧車をハシゴするなんて、本当に夢みたいね」ウサギははしゃいだ声で、満面の笑みを浮かべた。
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「さっきの観覧車は一周11分だったけど、こっちは14分かかる。つまり、3分も長く楽しめるんだよ」カメはどこか得意げに、嬉しそうに説明した。
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「こうして乗っていると、二つの観覧車がまるで私たちを祝福してくれているみたいね」
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「ほら、ここにおいでよ」カメの言葉に促され、ウサギは少し頬を染めながら、そっと彼のそばに寄り添った。同じ角度から眺める宝石のような景色が、二人の心に静かに特別な思い出として刻まれていった。
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