サステナビリティと脱炭素
サステナビリティとは何か?
持続可能な世界を実現することを目的とした言葉であり、原則は2015年に国際連盟が定めた17 Sustainable Development Goals (SDGs; https://sdgs.un.org/goals#)を達成することを意味する。なお、脱炭素とは、本SGDs目標の中の主に「Climate Action」に分類されるものである。よって、サステナビリティとは脱炭素以外の持続要素を含む、広い概念で定義されている
脱炭素とは何か?
地球温暖化が進行した際のリスクを国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)は発表しており、気象現象に伴うインフラ機能停止、熱波による死亡、気温上昇に伴う食糧不足、水資源不足と農業生産性低下、洪水他の生計崩壊などを挙げている
これらのリスクを回避するために、各国は2015年のCOP21 UN Climate Change Conference(パリ協定)にて脱炭素に向けた包括的取組を採択。大気中の二酸化炭素の排出が急激に増加した18世紀の産業革命以前から平均気温の上昇を1.5度に抑えることを追求することを目標としている(IPCCは2.0度と1.5度の0.5度の違いで、海面上昇や酸性化(海の生き物に必要な炭酸カルシウムの減少)や干ばつや洪水への発生確率が大きく異なることを発表している)
脱炭素シナリオの総括(マッキンゼー;Global Energy Perspective 2022) COP26(2021; Glasgow)で64か国(世界全体の89%の二酸化炭素の排出に同等)が脱炭素目標を発表しており、各国が目標を達成したシナリオ(Achieved Commitment)でも産業革命以前から1.7度の気温上昇が見込まれている。よって、産業革命前の気温上昇1.5度を到達するためには更なる脱炭素の関連施策が世界的に加速化する必要がある
脱炭素に向けた展望
今後、世界経済や人口の増加が見込まれる一方で省エネや電力効率の向上に伴い、向う10-20年の世界全体のエネルギー需要量はほぼ横ばいを見込む。ポイントはその内訳であり、最終エネルギー消費別で化石燃料由来(ガス、原油、石炭)が減少し、電化と水素が~50%程度の消費源となる見通し
電力見通し
上記電化が輸送・建物などの様々な産業セクターで導入される中、今後の電力構成としては再生可能エネルギーが2030年で50%、2050年で85%を占める見通し。主に太陽光と陸上風力がこれらの主力であり、洋上風力は許認可関連の制約を受け成長は限定的な見通し
原油
向う2-5年でピークを迎えその後減少(尚、米国や欧州は既にピーク超えている)。減少の背景は他産業の電化(EV化)の進行と燃料効率の向上。尚、化学産業では引き続き原油需要は堅調(プラスチックリサイクルの進行等で一部オフセット)であり航空燃料としても引き続き需要は存在
ガス
ガス需要は向う10年間で10%増加見通し、2035年にピークを迎える。尚、ガスは今後ブルー水素・アンモニアの生産用途として期待される他、既存インフラも水素・バイオガス・CCUS等にも転用される見通し
水素
水素は足元の需要から2050年迄に5倍程度増加する見通しであり、主な導入先は輸送セクター(道路・海運・航空)。現行は化石燃料由来の水素が~100%程度占めるが、クリーン水素(ブルー、グリーン)は2035年で~60%(~110百万トン)、2050年で~95%(~510百万トン)を占める
サステナブル燃料
バイオ燃料(Hydrotreated vegetable oil; 水素化分解油、バイオエタノール(サトウキビやトウモロコシ、木材などのバイオマスを発酵)、Synfuel(合成燃料;二酸化炭素と水素を合成し製造する燃料)であり「ドロップイン燃料」として期待が高い(現行の石油由来燃料と等価な機能を有しインフラ互換性も高い、燃料がバイオマスである液体炭化水素燃料)
CCUS
Hard-to-abateセクター(セメント、製鉄、化学)やブルー水素に於ける導入が期待される。足元は約40百万トンの市場規模に対し2050年迄には~4.2GT(4,200百万トン)の増加が見込まれる。一方、CCUSの事業モデル(誰がおカネを支払うか、経済的に回せるか)は課題が多く、CCUSの導入見通しは不透明さが残る