【実践】こどもたちとマンゴーの出会い
マンゴーとの出会い
今年の4月、すみよし愛児園にある畑で活動を行う中で、4歳児の女の子から
「わたしマンゴーすきだから、マンゴーをそだてたい!」
という声があり、1 人の声から『マンゴー調べ』がスタートしました。マンゴーを調べれば調べるほど、こどもも保育者も「マンゴーむずかしい・・・」と止まってしまうこともありました。しかし、こどもたちの思いを「難しいから」の一言で大人が諦めてしまうのではなく、「もしかしたらできるかもしれない!」の希望を大切にしながら、保育者が誰よりも全力で取り組んできました。一人の女の子と保育者の熱い想いを聞いた4歳児の子どもたち。熱い想いがだんだん伝わり、「やりたい!」の声が聞こえてきました。
マンゴー調べ開始
◇マンゴーの図鑑をつかって調べる
園の図鑑や保育者が図書館から借りたマンゴーに関する図鑑や絵本をこどもたちに紹介しました。 こどもたちからも保護者と一緒に図書館で借りた図鑑を持ってきてみんなで見ました。
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◇図鑑を見ながら画用紙に書く
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◇こどもたちと保育者でマンゴーの情報を共有する
国産(赤色)・外国産(黄色)のマンゴー
写真を見たこどもたちからは、「あかいいろしている!」「こっちはきいろだ!」と色に注目 したり、(外国産を指差しながら)「こっちのほうがほそながい」と形を比べたりしていました。 『マンゴーは赤色と黄色の種類がある』『様々な形がある』という情報をゲット!
こどもたちのマンゴー対する思いが保護者にも伝わり、家庭でマンゴーを食べた子もいました。「わたしマンゴーたべたよ!」の声にこどもたちは興味津々です。ここでは、「マンゴーはあまい」「いろんなかたちがあったよ」「いろはきいろだった」と話を聞いて、こどもたちの中でマ ンゴーについての想像がどんどん広がっていきました。
こどもたちが知ったマンゴーの情報
〇園にある廃材の中に『マンゴーゼリーのカップ』を見つけ、カップに描かれてるマン ゴーのイラストから『マンゴーの匂いはするのか』を考えました。
今知っている情報は、マンゴーは甘いということ。そこで、こどもたちは匂いが気になりました。 カップの匂いを嗅いでどんな匂いがするのか確かめてみると・・・匂いはせず。 そこで、子どもたちから「たべたい!」「た べたらたねがでてくる!」の声が聞こえて きました。
昨年度、このクラスからは「りんごをうえたい!」の声が出ました。実際にりんごを切って中を 見ると・・・種があることを発見!
その経験から今回、「マンゴーもきってみたらたねがあるか もしれない」と考えました。
こどもたちの思いが家庭に伝わり、保護者からご協力をいただきました。
① マンゴーを食べたご家庭から「種」を園に持参していただき、観察させてもらいました。子どもたちからは、「たねしろい」「まるくてほそながい」と新しい発見があり、喜びに満ち溢れていました。
② マンゴーを切っている動画と実際に家庭でマンゴーの種を植えた写真をいただき、 こどもたちと見ました。
初めて、実物のマンゴーを見たこどもたちは口を開けて驚いていました。マンゴーを切っている動画では、「たねだ!」と喜んだり、「ザクっておとがするよ」とマンゴーの固さを感じたり、図鑑や本では分からなかった部分を知ることができ、わくわくしている表情でした。
マンゴー農園
こどもたちは園長先生にマンゴーを食べたい想いを伝えました。園長先生から『トロピカルファームマンゴー』さんのニュース記事をいただき、こどもたちと一緒に見ました。記事を見ると、「マンゴーだ!」「みなみあるぷすしにあるんだって」と山梨県にマンゴー農園があると言うことを知り、驚いていました。
南アルプス市ってどんなところ?
パンフレットに掲載されている南アルプス市の形を見ながら、山梨県全体の地図を見比べ、パズルのように形を探しました。「これかな?」「こっちじゃない?」と真剣に探す姿が見られました。見つけると「おおきいね」「けっこうはなれているね」と色塗りをした甲府市と南アルプス市を見て感じたことを伝え合い、より南アルプス市について興味が広がっていました。
本物のマンゴーとご対面
保育者でトロピカルファーム南アルプスへ
保育者でトロピカルファーム南アルプスへ伺いました。園主である市川さんにこどもたちの想いを届けに訪ねました。こどもたちの様子を伝えると、マンゴーに関する様々な情報や知識を教えていただくことができました。こどもたちと実際にマンゴーハウスに訪れたい想いがありましたが、マンゴーの収穫時期が終わり、手入れに入る状況で今回はその想いを伝える形のみとなりました。3月にマンゴーの花が咲くと言うことで、その時期によかったら来ていただきたいと話をいただきました。
市川さんから、マンゴーとバナナの苗をいただきました。
ありがとうございます。
南アルプス市で収穫されたマンゴー
市川さんからいただいたマンゴーをこどもたちに紹介すると、「マンゴーだい!」「えぇーー!」と喜びの声が聞こえてきました。
1人ずつ匂いを嗅ぐ
「いちごみたい」「ももみたい」と匂いを嗅ぎながら様々な感想が聞こえてきました。
一人ひとりの感想を互いに聞き、「そうかも?」「もういっかい、かいでみる」と確認し合う姿から、マンゴー博士が増えていきました。
触ってみる
「つやつやしてる」「すこしやわらかいかも」と声が聞こえてきました。こどもたちが触って見て「やわらかい」と気づくと、「やさしくね」と慎重に触っている子もいました。
食べる
マンゴーについて調べはじめて4ヶ月。家庭でマンゴーのアレルギーチェックにご協力をいただき、こどもたちの食べたいの思いが叶いました。
園の栄養士の先生に目の前でマンゴーをカットしていただくと、こどもたちはその場に立ち上がりながら、体で喜びを表現していました。「マンゴーの真ん中に種がある」と想像しているこどもたちは、本当に真ん中に種があることを知り大興奮!「たねだ!」「ほそながいんだね」と発見していました。以前見つけたマンゴーのカップのイラストのように切っていただくと、その日一番の歓声が聞こえてきました。
一口サイズにカットしていただき、食べてみると満面の笑みが見られました。普段から果物が苦手な子もチャレンジ!渋い顔をしながらも「おいしい」と感想を伝えていました。
発芽方法について調べる
種をゲットしたこどもたち。しかし、こどもたちも保育者もマンゴーの種の発芽方法がわからないため、パソコンを使って調べ、紙にまとめてみることにしました。
この時、マンゴーから出てきた細長いものは種だと思っていたこどもたち。
実は・・・これは種ではなく、“殻”でした。
種はこの殻の中にあると知り、大発見!!!
発芽方法について調べると『水耕栽培』(種を水につけて栽培する方法)でやってみようと決まりました。しかし、ネットにはさまざまな情報があり、
①種を半分水につけながら発芽を待つ方法
②コットンに水を浸して発芽する方法
の2パターンが出てきました。
①であれば、『石』を使って種を挟みながら行おうと考えていましたが、種が思ったより小さいため潰れそうでした。そこで、こどもたちの考えを聞いてみました。
保育者:「種を石で支えるのと種のお布団を作るのどっちがいいかな?」
こども:「おふとん!いしだといたいよ〜」
こども:「いしだとつぶれちゃうよ」
こどもたちの考えを聞いて、②の方法で挑戦することに決まりました。会話の中で、こどもたちの種に対する思いや発想や考え方に驚きました。
マンゴーの活動を保育者だけでなく、こどもたちも一緒に考えて選択することで、気づくことのできなかった事に気づいたり、様々な視点から考えられると感じました。
種との出会い
“殻”を慎重に開いてみるとその中に白い膜があり、「ポテトチップスみたい」と感触から想像を膨らませていました。その膜を開くとついに種が!!
種のサイズを測ったり、触ったりしながら初めて見る種を観察しました。初めて見る種にこどもたちも保育者もテンションが上がります。
発芽にチャレンジ
【用意するもの】
・種
・コットン
・空きカップ
・水
こどもたちが順番にコットンに水を浸しながら、水耕栽培にチャレンジしました。コットンを優しく触りながら、優しく丁寧に行う姿に、こどもたちの芽が出てほしい気持ちやマンゴーの種が過ごしやすい環境を作りたいという思いが伝わってきました。
①種のサイズを手の平で確認
②コットンを浸す
③完成した種のおふとん
④日光の当たる場所を探す
こどもたちの力で発芽の準備を行い、あとは発芽するのを待つだけになりました。日々、発芽したか確認しているこどもたち。「まだだね」「おふとんの色が変わってきたよ」と小さな変化に気づく様子が見られています。マンゴーをくださった市川さんにも電話を通じて、こどもたちの様子を伝えたり、マンゴーの発芽に必要なことを教えていただいたり関わってくださっています。こどもたちの思いが種に届く日まで見守っていきたいと思います。
5ヶ月間、こどもたちとマンゴーについて調べる中で、難しいことでも大人の判断で
「できない」と決めつけるのではなく、「こうすればできるかも」「難しいならこのパターンはどうだろうか」と柔軟に考えていくことが、こどもたちの活動に大きく影響してくると感じました。調べる過程では、時には大人のペースで進むことがあるかと思いますが、こどもの声から活動を進めていくことで、気づくことのなかった発見や興味が広がっていくと気づきました。現在(9/17)、マンゴーの種は発芽していませんが、発芽したら、土に植え替えて栽培していきたいと考えています。万が一、発芽しなかった場合、市販で購入したマンゴーから種を取り出し、もう一度発芽にチャレンジと思っています。私の中でこどもたちと一緒に発芽した喜びを共有したい想いがあるため、外国産のマンゴーの種の発芽を行い、国産と外国産の種の違いも感じられたらと考えています。
これから季節が冬に変わりますが、マンゴー調べを進めていき、3月にトロピカルファーム南アルプスへ、マンゴーの花を見にいきたいと考えています。そして、市川さんとのご縁を大切にしていきたいと思います。
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