独自の体験を伴うものづくり。岡山発デニムブランドITONAMIが届けるユニークな取り組みと届けたい思い
SWAYはこの秋に店舗で手に取ってお楽しみいただける冊子を準備しています。
今回のSWAY magazineは誌面版と連動して、岡山県を拠点にデニムブランド「ITONAMI」を手がける山脇耀平(やまわき ようへい)さんにお話をお伺いしました。ITONAMIが運営する岡山県倉敷市児島にある宿泊施設「DENIM HOSTEL float」について「人が集まる場所」というテーマでお届けします。
初回の連載となる今回のnoteでは、ITONAMIのデニムについてや、その取り組み、ITONAMIがみなさんに届けたい思いについて探ります。
岡山県倉敷から届けるデニムブランドITONAMIのユニークな取り組み
– 山脇さんが手がけるデニムブランドITONAMIは、どのように始まったんですか。
山脇:僕たちのデニムブランドITONAMIは僕と弟の兄弟が共同代表で、岡山で活動をスタートしました。弟が岡山の大学に進学したことがきっかけで、デニムが岡山の地場産業であることを知り、物作りの面白さや、職人さんとの出会いを通して、デニムの魅力をたくさんの方に届けたいと思ったことがきっかけです。まず最初の活動として兄弟でデニム工場の職人さんや経営者の方にお話を伺い、ウェブで発信を始めました。
それから、自分たちの事業としてデニム製品をつくり、さまざまな地域のポップアップで販売。キャンピングカーをクラウドファンディングで購入して、全国47都道府県をキャンピングカーで移動販売する企画もしました。
梯:キャンピングカーで全国を周りデニムを販売する活動では、ITONAMIオリジナルのデニムをプロデュースされたんですか?
山脇:はい、当時はEVERY DENIMという屋号で、最初からオリジナル製品を作り販売をしていました。僕たちがデニム工場でお話をお伺いすると「新しい素材で作ったデニムを世の中に出したい」という声を聞くことがありました。
ただ、工場がブランドに向けてBtoBで販売する場合、ブランド側が採用しないと実現が難しいので、まずは僕たちのような立ち上げたばかりのブランドであれば小さく試せると考え、新しい素材を積極的に使い、製品として届けることにしました。
梯:デニムを作るために新しい素材を使うという発想がいまいちピンと来ないのですが、どういった素材を使うんですか。
山脇:まず前提としてどこまでをデニムと捉えるかですが、一番クラシックな定義は、コットン素材をインディゴで染色した“王道のジーンズ”だと思います。 それ以外に僕がいま履いているようなナイロンの糸にインディゴで染色したナイロン素材のデニムもあります。これは夏でも快適な着心地ですよ。
梯:ナイロン素材もデニムと捉えることができるんですね。
山脇:今まではコットン素材しか染められませんでしたが、 リネンやシルクに染められるようになり、技術の進歩とともにデニムでできることは増えています。市場にヒットするかはまた別の話で、開発はされているものの日の目を見ることなく、生地のサンプルだけある状態のデニム生地がいくつかあるので、僕たちのブランドでそれらを届けていくことができれば面白いのではと思ったのが、製品開発の一つのきっかけです。
梯:染色の方がデニムとしてのアイデンティが大きいということですか?
山脇:インディゴの染料を使い製作していることが一般的なデニムの定義です。でも、最初から定義されていたのではなく、自然とそういう流れになったと考えています。
日本のデニム市場が少なくなり、どうすればデニムの産地が産業として成り立つのかを考えたときに、主流だったコットン以外にもユニークな素材を使うことで生き残りをかけたのだと思います。 デニムブランドそれぞれがオリジナリティーを出そうと挑戦しているところです。
梯:僕たちの世代は当たり前のように履いているデニムですが、どのように作られているかなど知らない部分も多いので、デニムについての話だけでも興味深いですね。
ITONAMIがデニムを通して届けたい思い
梯:コットン以外の素材を使ったデニムを製作する以外にITONAMIが他ブランドと差別化しているポイントなどはありますか?
山脇:一般の方も参加できるプロジェクト型でデニムの製作をしています。全国のいろいろな場所でデニムを回収し、デニムを再生し、また販売していくプロジェクトです。他にも、一般の方にデニムの材料となるコットンを育てていただいて、そのコットンをブレンドした服を作り、お渡しする取り組みもしています。
自分が作る過程に携わった製品を手にできるような独自の体験を伴う形での展開は、ITONAMIらしい珍しい取り組みだと思っていますね。
梯:ITONAMIがデニム産業を一般の方に広めるアプローチはとてもユニークで素敵です。山脇さんたちの活動は、どこに主軸を置かれていますか?
山脇:瀬戸内海の地域と岡山県倉敷市の児島を自分たちなりに盛り上げていきたいというのが、究極的な軸の部分です。とても個人的なことですが、僕たち兄弟が社会人として、どう生きていこうか考えもなく路頭に迷いかけてたときに、「デニム」というチャンスを与えてくれたことに感謝の気持ちがあります。
やりたいことを見つけて、それができることはまさに奇跡。僕らにやりがいを作ってくれたデニム産業やデニムに関わる人に恩返しをしたいという思いが強いです。
僕たちITONAMIの存在意義や価値は「僕ら世代にどのような届け方をすれば、デニムに関心のない人が興味を持ってくれるかを考えていくこと」だとと思っています。DENIM HOSTEL floatができたのは、実際に岡山のデニム産地に足を運んでもらうきっかけ作りや、デニムのある空間で過ごしてもらうことでデニムを知ってもらうための手段ですね。
梯:最後に、デニムはファッションという嗜好品ですよね。シーシャも同じく嗜好品で、生きるためには必要なものではない。嗜好品を販売する上で、ITONAMIはどんな意味を商品に乗せて届けているのか知りたいです。
山脇:DENIM HOSTEL floatで僕たちのITONAMIのデニム製品を販売していること自体が僕たちの根本的な思想になっています。DENIM HOSTEL floatに宿泊をして、自分なりの時間を選択し過ごす体験の象徴として、宿泊施設にデニムがあるんです。必需品ではないけど、デニムを通して誰かと価値観を共有することや、経年変化の価値を知るきっかけになったら嬉しいなと思っています。
もう1つは、地場産業を盛り上げたいという意味合いで、日本の岡山でデニムが生産されている価値を伝えたい。旅をしてその地域を訪れたことの証として、地場の物を手にすることでみなさんの思い出の一つにしてもらえればと思っています。
▼山脇さんが紹介してくれたITONAMIのデニムショートパンツ
ショートパンツの裏側がメッシュになっている水陸両用デニムパンツ。軽さと速乾性にすぐれ、マリンスポーツやアウトドアにもおすすめです。
🌿
ITONAMIに注目する人やメディアをたくさん見かけますが、山脇さんたちが生み出すユニークな取り組みと、デニム産業を盛り上げたい純粋な気持ちが、たくさんの人を魅了するのだとお話を聞いて感じました。
誌面では、ITONAMIの思想に触れることができる宿泊施設「DENIM HOSTEL float」がどんな意図やパワーを持つのか、SWAYの視点も交えて深堀りしてお届けします。