痛むのに大事にしている傷がある死がくるとすればそれは此処から / 川瀬 凪 その傷を失ってしまったらもう私ではなくなってしまう原体験のような痛み。 時々触ってはやっぱり塞がっていなくて、でもそこにまだある事に安心してしまう。 膿ませないけど治らせない。 どういう事なんだろうと立ち止まって考えた時、 『過去の自分を蔑ろにしない』事かなと思いました。 気がすむまで泣いていたらいいよ。 怒っててもいいよ。暴れても大丈夫。 その中で死んでもいい。 時が過ぎてみんなが忘れても私
通過待ち 明るい歌のはずなのに切なく響く君の鼻歌 / 川瀬 凪 鼻歌はどんな人が歌っても少し調子がずれていて 上手だね、完璧だねとはならず 楽しそうだな、何か良い事があったのかな、 というところに着地するのがとても良いと思います。 あなたが楽しければ安心だ。 ちょっとくらい調子外れでも。 あたたかな日々に包まれて生きていたい。 正しいことばかりが、 正解に早く辿り着くことばかりが、 豊かさを齎す事とイコールではないように 各駅停車しか止まらない静かな駅で 通り過ぎる電車
車窓より街灯の下もう二度と逢えないだろう 野生の薔薇 / 川瀬 凪 一瞬で目を奪われる美しさがありました。 野生である事が堪らなく唯一で清らかで、 突き刺すように生きている。 そのような横顔をしているひと、していた人を 思い出します。 車窓から眺める景色が好きです。 人の生活を俯瞰して見るのが好きなんだと思います。 それはこちらに責任がないからだなと気がつきました。 そのままの君が好きだよ どんな君も好きだよ という謳い文句にその通りだねと頷きかけて やめました。 私の知
2024年 8月7日 思い切って短歌をはじめました。 目にうつるもの、心に残ったものを 言葉で切り取るおもしろさに夢中なりました。 子供の頃から詩や物語が好きで、 でも恥ずかしさから周りに話す事があまりなく、 自分で書いてみたい気持ちをしまったままでした。 一、二年ほど前からSNSのタイムラインに 何故か短歌が流れてくるようになり その一首一首を手掛かりに 好きな歌人、好きな歌集、と ぼんやりとした白紙の地図に印をつけて ある日たどり着いた八月の扉でした。 アプリ575
打ち寄せる浜辺に遠くタンカーの淡い航路と のびやかな昼/川瀬 凪 美術館が好きです。 企画展目当てに行くこともあれば 建築的、文化的な魅力に惹かれたり 併設されているカフェがお気に入りだったり。 様々な層の様々な目的、感性の人達が ふんふん言いながら歩いてるのも面白いです。 休日は家族連れもいて、特に子供は興味に忠実で 名作には見向きもせず館内のちょっとした造作を観察していたり退屈な時はちゃんと退屈そうにしていてとても良いです。無限に目が開かれている。 私もそうありた
宛て先を定めないまま時は過ぎホットケーキを良い色で焼く/川瀬 凪 (お題 ラブレター) なんとなく誰に宛てるでもない手紙のような日々の連続です。お元気ですか、私は元気です。の毎日。 ホットケーキが上手に焼けます。 特技のひとつです。 お店のようにはいきませんが 明るいきつね色で表面がしっとりすべすべしていて バターとメープルシロップをかけて。 ホットケーキはその人が作らないと絶対にその味 にならない不思議な食べ物だと思います。 その人の台所の空気や時間が染み込むような気
天国のサーティワンは今までの 限定全部出てるって最高/川瀬 凪 ハッピーで浮かれた天国を詠みたくて あれこれ考えました。 ウォータースライダー並ばずに滑れるとか バカみたいに飛び上がれるトランポリンとか。 そういうもので溢れていて 偶々となりにいた人とでも笑い合えてしまうような。 そして笑ってるうちに全部忘れちゃう。 はじめのはじめのはじめの頃に抱いていた 只、世界そのものを愛していた気持ちだけを残して。 日曜学校のある子供時代だったので 神さまの色んな話を勉強したので
君が降り僕が乗るバス 外は雨 君が傘振り 僕は手を振る/川瀬 凪 父親の記憶の少ない人間ですが 雨の日に傘をクルクルっと回していた背中が印象的で時々思い出します。 歳を重ねて、 目にする景色耳にする話が増える度に 感情に引っぱられ散らかっていた思い出の断片を正しくラベリングされたひきだしに仕舞う事が出来るようになってきました。 すれ違ってしまうとしても目が合った瞬間に お互いを認め合えたらそれはもう その先を祝福しあったのと同じだと思います。 誰かが離れる街に誰かが新
青空の火葬場で腕時計眺る 新たなる舟は漕ぎ出し/川瀬 凪 祖父を焼く時に最後まで棺に手を振り続けた 祖母の細い手首を今もずっと美しいものとして 記憶に残しています。 逆光でしか見えない物事の側面を愛していたいです。 光の方へ、前へ前へと進む人がふと振り返った視線の先にあるもののような。 忘れないでいたいです。 それではまた。 川瀬 凪
七番目の星《地球》より帰還した子の靴底に サハラ砂漠の砂は輝き/川瀬 凪 靴底の砂ってずっと取れませんよね。 砂場の砂も海の砂も、きっと砂漠の砂も。 王子様の靴の底にもサハラの砂は残っていて しばらくは歩く度に夜空にこぼれて金色に光っていたら綺麗だろうなと思いました。 靴底の砂のような写真にも何にも残っていないけれどその時その瞬間を思い出せる物を沢山持てたらいいなと思います。 いつか八番目の星へ旅立つ時のために。 おやすみなさい 川瀬 凪
とんでもないタイトルですみません。 たまには自分の詠んだ歌を振り返ってみようと思います。時系列に本日の5首。 死んじゃった友だちに会いたい 友だちを亡くした事なんてなんてないのに (12:43) SNSのお題「鬱」で詠みました。 よく言う「家にいるのに帰りたい」の派生です。 でもなんとなく心に居ませんか、 死んじゃった友だち。もう会えない友だち。 前に進む為に置き去りにせざるを得なかった 過去の自分に近いかな、と思います。 人生の美しい部分。 冷蔵庫に隙間を空ける為だけ
若き王勇ましく進軍す 飛車にも角にもカラムーチョの狼煙立ち/川瀬 凪 今日は小学生と将棋を指しました。 ハンデとして大人は勝ち取った駒を使わないルールで。 序盤は目先の勝ちに気を取られている彼に 色々アドバイスしながらですが、 終盤は彼に寝返った元自軍の兵が大挙してくるので こちらも死に物狂いでした。楽しかった。 生まれたての若い棋士は直前に カラムーチョを食べていたので一手指すごとに そのやわらかな指先からスパイシーな香りが漂っていて、まるで真っ赤な煙の猛々しい狼煙が
天気予報晴れてる夜のマークは星 今夜は美しい夜でしょう /川瀬 凪 春ぐらいから 寝室の窓のすぐそばにある街灯の電球が切れていて、防犯上危ないなと思いながらも真っ暗な寝室の眠りは深くこれはこれで悪くないと思っていましたが 今日つきました。 部屋にほんのりオレンジ色の灯りが帰ってきました。これもこれで良い。 こんな暑い日に取り替えてくれた人がいる。 その人に良いことが沢山ありますように。 夜8時すぎの天気予報は 日本列島の上に幾つもきらきらの星マークが浮かんでいて晴れた夜は
無計画な僕らが食べる サービスエリアのソフトクリーム/川瀬 凪 31字ですらない。 今日ドライブに行きました。 目的地を決めずにただなんとなく都会が見たくて首都高に乗って流れる景色を見てました。 スカイツリー、サントリーの金のアレ、ゲートブリッジ、無限にあるビル、人の暮らし、海。 途中江戸川区で下道におりて通った知らない街がなんだか一番良かった。 白い団地と緑と清潔そうな遊具のある公園、小学校、公文式が入ってるスーパー、街路樹の影を窓に映しながら走るコミュニティバスが印象
白ごはんにお刺身のっけて食べた かつて猫だった時の気持ちで/川瀬 凪 生まれてこのかたずっと人間なんですけど 時々かつて猫だった時の気持ちや星だった時の気持ちを思い出すような、出さないようなふわふわした大人です。 猫と云えば今年の3月に老いた愛猫を亡くしました。白くて目の青い静かな猫でした。 半年程の介護を経てある日思い立ったように天国へいきました。 思えばこれまでの人生で一番長く側にいてくれたのは彼女です。 一人暮らしを始めてすぐ飼い始めたので実質2匹暮らしでした。私も