「待ち」ガイルと「幸せになりたいなぁ」の相関関係をテラスハウスから学ぶ #1
2020年3月15日に行われたTOPANGAチャンピオンシップにおいて、格闘ゲームコミュニティを震撼させるビッグマッチが催された。
ときどVSウメハラによる優勝決定戦だ。
格闘ゲーム業界を支える2本柱
格闘ゲーム業界を知る人には、この二人の因縁を知らない者はいないと断言してよい。
二人の因縁のスタートは記憶に新しく、2018年に行われた獣道2まで遡る(ときどにとってウメハラを意識しだした時は2013年ウメハラ VS Infiltrationを見て以降であるため2013年が始まりともいえる)。
2018年当時、彼らの活動拠点としていたゲームはストリートファイターⅤだ。このストリートファイターⅤにおいて、ときどは絶対的な強さを誇っており、まさに最強という名にふさわしい男であった。
対して、ウメハラはトッププレイヤーではあったが、ときどほどの絶対的な数字をこのゲームで納めていたわけではない。
にもかかわらず、獣道2開催に差し当たり、二人を知るトッププレイヤーに勝利予想を尋ねると、ウメハラが優勢であるという声が多かった。
普通に考えれば、ストリートファイターⅤで結果を残し続けているときどの方が下馬評が高くなるはずが、なぜこのような逆転現象が起きたのか。
CPTと獣道は何が違うのか
それは、彼らの主戦場としているCPT(カプコンプロツアー)の大会と獣道とでは、決定的な違いが二つあるからだ。
一つ目は、CPT(カプコンプロツアー)は2本先取ないし3本先取で勝敗が期すのに対し、獣道のルールでは10本先取で勝敗が期すという形式をとっているというところにある。言い換えると、CPTが短期決戦で勝負が決まり、獣道は長期戦で勝負が決まるのだ。
ストリートファイターⅤは一度のミスや一度の読み負けで試合を落とす展開があることから、短期決戦であると、どうしても運の要素が勝敗に絡むことが多くなる。この点において、CPT(カプコンプロツアー)の大会ではその日ノッているプレイヤーが好成績を収めるのも少なくない(もちろん、実力を備えた上での話だ)。
要するに、長期戦になればなるほど運の要素が収束されて、より実力のある者が勝ちやすくなるということだ。
二つ目は、対策すべきキャラクターないし、プレイヤーが一人に限られるということだ。ウメハラの前評判の評価が高い理由はここにある。
ストリートファイターⅤで使用可能なキャラクターは当時30キャラを超えていた。これはゲームを楽しむうえで、自分の好みのキャラクターを見つけるという意味ではバリエーションが多く有難い。
しかし、裏を返すと競技プレイヤーとして勝ち抜くには、その数多いキャラクターの特性を頭に入れておかないと勝ちきれないということだ
二人の使用するキャラクターの特性
ここで少し話は反れるが、ときどの駆使するメインキャラクター「豪鬼」は攻めも守りも強いハイスタンダードなキャラクターである(その代わりほかのキャラクターより体力が少ない)。
攻めの強いキャラクターは、相手の使用するキャラクターの情報が多少抜けていても、自分の攻撃を押しつけて戦えることから、多種にわたるキャラクターと対峙する大会やストリートファイターⅤのゲームモードにあるランクマッチシステムおいて強さを発揮する。
対して、守りの強いキャラクターというのは、相手の攻撃に対して有利な行動をとりつつ試合をコントロールするプレイスタイルになるので、相手がどのような攻撃をするかの知識がないとうまく立ち回ることができない。
ウメハラの使用するキャラクター「ガイル」は守りの強いキャラクターに分類される。ガイルというキャラクターは、ストリートファイターというゲーム史の中でも常に守りの強いキャラクターとして登場していたことから「待ちガイル」というその場でしゃがんで相手が動くのを待つというプレイスタイルを得意としていた。
長期戦はウメハラのためにあるルール
話を戻そう。獣道というイベントでウメハラの神髄が発揮されるのは、一騎打ちであり長期戦であるからだ。守りの強いガイルを使用する以上、一つのキャラクターに絞った対策をとれるということは大きなアドバンテージである。そして、詰めた深い対策をとるというところはウメハラの最も得意とする分野だ。
また、誰よりも格闘ゲームをプレイしてきたと日頃から豪語するウメハラは、試合の中でその日の相手の癖をつかむ能力に長けているし、自身のプレイに対する修正も素早い。
かくして行われた獣道2では、下馬評を覆すことなく10-5という大差をもってウメハラがときどを破った。
話は次回に続く。
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