日常生活自立支援事業を考える
「福祉サービスを利用したいけど、認知症が進んできていて、自分で考える自信がない」
「電気代の支払いや年間の管理が自分では難しくなってきた」
こういう時に支援者が検討するものとして、日常生活自立支援事業があります。
略して日自とも呼ばれますが、この制度はとかく分かりにくい、使いにくいという声が多いです。
少し、解説していきます。
日常生活自立支援事業とは
認知症・知的障害・精神障害などにより、判断力が低下した方が、地域で自立して生活できるよう、契約に基づき、福祉サービスの利用援助を行う事業です。
根拠法は社会福祉法で、実施主体は都道府県・指定都市の社会福祉協議会です。ただし、利便性の観点から、窓口は市区町村社会福祉協議会になっています。
押さえておきたいポイント
①認知症の診断は必要ない。
対象の定義を見ると認知症の診断や障害手帳を持つ人が対象にも思えますが、そういったことはありません。
ポイントは判断能力の低下。
具体的には、買い物や受診など日常の簡単な行為は行えるけど、必要な情報収集や契約理解、申込などの比較的大きな判断を要することに不安を覚えるかどうかになります。
②契約に基づくものである
契約書を交わしてサービスが始まります。
よって、契約書を理解できるほどの能力が必要です。
具体的には、1人で契約書を完全に理解はできなくても、助言があれば理解できる状態です。そして、サービスを行う人間が社会福祉協議会の職員であることを理解できるかも重要です。
自分がどこのサービスを利用しているか理解していないと、トラブルにも繋がりかねないので、要チェックポイントです。
③正確には、金銭管理事業ではない。
支援者の多くは、日自=金銭管理という認識ですが、その本質は違います。
社会福祉法を参照すると、日自は福祉サービス利用援助です。つまり、福祉サービスの利用を援助する過程で通帳預かりや支払いの援助などが必要な場合に、その支援が選択されます。
金銭管理ありきで話を進めると、支援に即したものにならないこともあるので要注意です。
(ただし最近では、制度運用側も金銭管理を前面に出すなど、本質とは次第にかけ離れていっているのが現状です)
④代替サービスがない
法の裏付けがあり、制度として整っている日常生活自立支援事業は、その代替はありません。
NPO法人や民間企業が行う同様のサービスもありますが、利用料が高額だったり、対象エリアが限られていたりと、社会福祉法の理念を完遂するほどのサービスではありません。
よって、日常生活自立支援事業は、その自治体住民はその自治体の社協の援助を受けざるを得ないという、選択余地の低い仕組みでもあります。
そのため、適切な事業運営と、社会福祉の倫理が求められる事業でもあります。
まとめ
今回は簡単にポイントを整理しました。
1番大切なのは、適切な倫理に則った事業運営が必要だということです。
契約を先延ばしにする、待機者が多く職員不足が露呈する、ひどい時は利用料横領(もちろん犯罪です)のニュースがある時もありました。
いろいろな課題が現場レベルでは散見されますが、少しでもよくなることを期待して、特集しました。
また、解説していきたいと思います。
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