晩秋の高草山。やっぱり山の上のラーメンは美味い。
今日は休みだった。八時四十分に目覚ましを掛けていたのだが、その時はたしかに起きた。だが、二度寝して、次に起きたのは十一時だった。
外は晴れている。
最近、私は新作小説の構想を練っている。今日も一日それをやろうかと思ったが、外は晴れているのである。
一日中、小説のことを考えて良い案が浮かぶかどうかも疑わしい。
私は朝食を食べると、とりあえず、普段履いている靴下が減ってきているので、靴下を買いに出かけた。そして、家に帰ってきたのが午後一時。
まだ、家から車で十五分の所に登山口がある高草山にならば登れる時間である。
「行くぞ」
半分「めんどくせー」とか思いながら、体力維持と、登山の感覚を保つためにも、私は登山装備を持って家を出た。
高草山山頂ではラーメンを作って食べるつもりだった。
空は晴れているのだが、風は強かった。
静岡県のこの辺りは、年中雪が降らない。雪山登山の技術も知識もない私は冬は専らこの山を登って体力維持をする。しかし、ただトレーニングのために登るのでは面白くないから、山頂での食事を楽しみに登る。それから、今日は小説の構想を歩きながら練るつもりだった。
実際登り始めてから、小説の構想を考えた。
今、予定している登場人物の数は多過ぎるのではないか、と思った。
男の友情をテーマにしたいから、あまり恋愛が表に出るのは良くない、それなら女の登場人物を減らそう。それから、友情にフォーカスするために、主人公の兄など登場する予定だったが、それも削ろう、などと考えていた。と書いたところで読者には何のことやらさっぱりわからないと思う。
創作のためのこういうひとりの妄想ほど楽しいことはない。
友情を際立たせるためにはどうしたらいいだろうか?
また、読者を置いてきぼりにすることを書き始めた。
小説の構想である。
三人の若者の友情を書きたいのだが、ヒロインはひとりのほうが良い、いや、予定通りふたりでいくか?いや、そうすると恋愛模様が表に現れすぎて、友情の物語でなくなってしまう。男と女の友情も書くべきか?男女の若いグループの友情?そいつが一番ウケるか?
いや、しかし、男の友情物語にヒロインふたりは多い。
さらに、主人公の兄もその恋愛に絡ませるつもりだったが、それでは込み入りすぎている。
物語はシンプルで内容が深いほうがいい。
などと考えながら、いつもの登山道を登っていった。
山頂に着くとさっそくベンチに座ってラーメンを作り始めた。
風が強く、火が消えないか心配だったが、なんとかラーメンができた。
寒い中の熱いラーメンは最高だった。
やっぱりこれだよな。
雪山デビューはいつになるか知らないが、友達が少ない私だが最近、友情が将来の夢よりも重要だと思い始めてきている。私は中学生の頃から、歴史に名が残るような凄い人間になりたいと思っていて、独りで生きて来たが、ようやく、いまさら、友達の重要性に気づいたのである。
私はいつも独りで登山しているが、友達と登山もいいかもと思い始めている。だったら、サークルとかに早く入ればいいと言われそうだが、私の心は病んでいるので、そう焦ることなく、心の健康と共に、自然に友情を感じられるようになるのを待ちたい。
そういう意味でも、今構想している小説は友情の物語であるので、これに取り組むことは私を成長させてくれるものだと思う。
ラーメンを食べ終えたらすぐに下山始めた。
下山中に、先ほど考えていた、登場人物を削ることをやっぱりやめようか、などと考え始めた。いや、頭の中はクルクル回るものだ。こうやって、長い時間を掛けて構想を練ればきっといい小説ができるに違いない。
この冬、雪山に行かない私は登山シーズンオフなので、小説を中心に生活するつもりだ。
春には良い作品ができることを期待して、この冬を過ごしていきたい。
山は晩秋である。