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【超短編小説】發 cry Hearts

 手の中にある浮き牌を掴んだまま数秒が過ぎた。
 切り時を間違えたな、と思う。重ねれば早く動けると思いズルズルと残してしまった。下家の雑な鳴きはどう見ても役バック、生牌の發を切れる状況ではない。
 中膨れの平和手をいじり回して逃げ切れるのは数巡が限界で、聴牌維持をして親番をキープできる保証も無い。

 点棒を確認する。
 親番をキープして次局、本場を積めばまだ逆転の目はある。しかし流れてしまえばかなり厳しい。
「早く切りなよ」
 下家が言う。ほっそりとした指先に挟んだ煙草が見えた。
 俺は發を叩きつけた。

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733字
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