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【小説】火と悪夢と境界線

 浮浪者の一人や二人が死んだところでそれが何だと言うのだ、そう言いかけて口を噤んだ。
 報告してきた部下はまだ何か言いたそうにしている。俺は目脂を穿りながら大あくびをして、そわそわと落ち着かない部下の手から紙コップに淹れられたコーヒーを受け取る。
 コーヒーは厭な酸味が立っていて不愉快な味だった。 

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