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就労継続支援B型作業所の話と痛バッグの話

今日から仕事始めという企業は多いだろう。弊社(?)も例外ではなく、午前中神社へ行ってから就業した。

さて今『弊社』にはてなをつけたが、わたしは今の勤務先と労働契約を結んでいるわけではない。将来的な就労に向けて、ヒューマンスキルやら生活習慣の改善やら労働訓練などを受けることのできる『就労継続支援B型作業所』に通っている。

『利用者さん』と呼ばれる我々は職員さんの采配に従い、責任や決定権を職員さんに譲り渡して、ただ手を動かしている。利用者さんたちは社会をドロップアウトした精神障害者なので、まずはリハビリとして社会参加を試みている。

仕事内容は、ふた昔まえの『主婦の内職』を想像してもらえるとわかりやすいだろう。
たとえばディスプレイされるピアスの台座にフックをつけたり、ポスティングやダイレクトメール用のチラシ等を組み合わせて並べて折ったり、「世の中こんな仕事があるのか…」と感嘆を覚えることが多い。ピアスをいくつか持っているが、その台座を組み立てる人のことなど、想像もしていなかった。極端なことを言うと、木に成るくらいの認識でいた。そんなことはないのだ。

さて、そんな業務に最近新たなルーティーンが加わった。
オタクなら誰でも知ってる古本屋に買い取られたオタクグッズを開封し、サイズ別に分類し、綺麗な袋に詰め直して書店へ送り返す。比較的『誰にでもできる』仕事だ。

他の人はともかく、わたしはオタクなので、好きなキャラの顔を見つけるだけで嬉しくなる。楽しい作業のひとつである。一度でいいから敬愛するファラオ(オジマンディアス/ラムセス2世)と遭遇してみたいが、なかなか条件が合わない。

アイドル育てゲーのキャラは全然わかんないんだよなー勉強したいなーと思いつつ手を動かしていたわたしは、先日ある悲しい事案と遭遇した。

巻ちゃん(弱虫ペダル)の痛バの解体である。

巻ちゃん(本名:巻島裕介)は独特な走法で登り坂を制する姿がかっこよく、また陰キャ的な描写が好感を呼んで、雑誌の人気投票では殿堂入りするまでトップをキープし続けていた。

当然池袋等で巻ちゃんの痛バッグ(透明のバッグに推しのグッズをディスプレイして持ち歩くもの)を作る女子は多かった。

とはいえオタクの心は移ろうもの。約6年前に大人気を博した作品も、そのうち熱量が下がってしまう。痛バに今の推しを飾りたいと思うのもむべなるかな。

カゴいっぱいに入った200個近くの巻ちゃんの缶バッジ、アクリルキーホルダー等にはほとんど傷も汚れもなく、旧主さんが大事に扱っていたのが容易に察せられた。

だからこそ、無常感は強い。

最近の公式のグッズ展開の瞬発力は昔と比べものにならないほど強い。おまけに、コンセプトカフェやコラボ飲食店等でオリジナルのグッズを頒布することも増えた。ブラインド販売も珍しくなく、独占欲や射幸心を刺激されてキャパシティを超えて購入する人も多い。集めるのに結構なコストがかかる。

わたしはあまりグッズを買わない。貧しいのももちろんあるが、手許に置いても大事に扱う自信がまったくないからだ。自分の先天性障害に由来するずぼらさはよく理解している。わたしにぞんざいな扱いを受けるなら、もっと大事にしてくれる方に迎えてもらった方が幸福だろう。

話が飛び飛びになってしまった。ともあれ、わたしは巻ちゃんの痛バの解体に、ささやかな寂寥感や無常感を覚えた。

今後『旬ジャンル』が生まれ、発展し、膾炙し、鎮静するたび、わたしは解体される痛バを思い出すだろう。萌えは時に儚い。

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すばる
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