「常識」の正体は?
山本七平に
「常識」の研究
「常識」の落とし穴
という著作があります。これは、大切なことを指摘していますが、彼の悪い癖で
「常識」という概念の説明が弱い
ために、多くの人に理解されていないように思います。
そこで、今回は
山本七平の「常識」
を、理論的に説明し、使い道を広げようと思います。
まず、山本七平は
「常識」と「権威」
を対立概念
として考えます。昭和の敗戦前にあった
「権威」で押しつけた国家神道
は、敗戦で力を失います。しかしながら
日本人の「常識」としての神社仏閣への対応
初詣は神社・葬式は寺
は残っています。更に、現在ならこれに加えて
結婚式はチャペル
が加わるでしょう。
こうした
行動を無意識的に決める
価値観等
が、山本七平流の「常識」を構成しています。
これは、マックス・ヴェーバーの「社会学的手法」で考えると、よくわかるでしょう。ヴェーバーの手法は、人間の社会的行為を
目的合理的行為
価値合理的行為
感情的行為
伝統的行為
の4種類に分けて考えています。その中でも、社会学は1.の「目的合理的行為」の研究を、主目的としました。もう少し言えば
理想化したモデル世界で
原因-結果の関係が明確
なモノだけが
社会学の対象
としたのです。
しかしながら、人の行動は
価値観・宗教・社会的伝統
等に大きく影響されています。こうした
理論になりにくいモノを
「常識」
としたのが、山本七平の発想です。
一例を挙げれば
新聞等のマスメディアの報道は「権威」
しかし何を報道するか選ぶのが「常識」
と言う関係です。
山本七平が、最初に取り上げた例は
南北問題
です。
<以下山本七平の論法>
北型人間は、高い収入と生活水準を維持するが、これを維持する為に、異常な努力を払い、激烈な競争と、緊張に耐えている。
南型人間は、のんびりした生活で、悠久の中に生きるが、文明の生活水準とは、隔たった生活になる。
例えば、アラブ式のタクシーに乗ったら、運転手が従兄の店に行って、小一時間話し込む.これぐらいは仕方ないのが、南型の生活である。このタクシー運転手が、東京での勤務に耐えるとは思えない。
<終わり>
私達は、上で書いた「北型」の「常識」に縛られているが、これを当たり前とする傾向があります。上に書いたように
時間を守る
ことは、大事と思う人は多いでしょう。しかしこれが、アラブなどの南型の生活では、優先度が低いのです。
こうした「常識」は、マックス・ヴェーバーの指摘したように
綺麗な理論には乗りにくい
面がありますが、私達に大きな影響を与えています。
そこで、山本七平が行ったように
多くの事例を挙げる
他の文明と比較検討する
等の手法で、この問題に向き合うべきだと思います。
なお、マックス・ヴェーバーの考え方は、以下を参考にしてください。
「社会学の根本概念」を見直す|鈴木良実 (note.com)