日本教的な新しい資本主義
岸田総理の施策として
「新しい資本主義」
が示されました。私は、現在の「資本主義」には色々と問題はありますが、「資本主義」自体は、まだまだよい面があるので、これからも伸ばしていくべきと思います。しかしながら、岸田流「新しい資本主義」の詳細はよくわかりません。そこで、新しい資本主義について、考えていることを書いてみました。
1.「資本主義」とは何か?
資本主義は、それまでの封建主義から、市民革命・産業革命を経て、現れた体制です。国政により、私有財産と自由な経済活動が認められています。社会の前提は、貨幣経済が確立し、労働力と商品に対する市場が成立していることです。
資本主義の良いところは
個人の努力で成果を出せる
投資と回収の仕組みができる
です。封建制度では、領主と農民の身分の違いなどで、越えられない壁があります。現在も「格差の固定化」などという人がいますが、封建制度では「機会も与えられない」状況でした。これを考えると、資本主義の
機会均等
の建前があるだけでも、私達は幸運だと思います。私も、貧困家庭の育ちでしたが、何とか高学歴にまで這い上り、それなりの会社生活をできるようになりました。このような機会は、身分制度がある社会では、無理だったと思います。
また、投資と回収については、株式会社のように資本を、広く集める仕組みがあります。また経営者は、設備や人材に投資し、その力で成果を得る。このような経営状況が
金銭的利益
として明確になります。
一方、従来の資本主義の欠陥は
金銭的な評価に偏りすぎる
点です。また、現在日本の資本主義には
アメリカに偏る
危険性があります。
2.アメリカ的資本主義の危険性
アメリカは、フォード生産システムなど、近代的な工業化を進めた、資本主義の模範国家です。しかしながら。アメリカの資本主義には、色々な欠点もあります。第二次大戦で敗戦した我が国は
アメリカ追従を国是
として、自由民主主義そして資本主義に突き進みました。これを見直すためにも、アメリカの資本主義の欠点を意識する必要があります。
さて、この欠点は大きく分けて
西洋文明の欠点
アメリカ固有の欠点
があります。1.の西洋文明の欠点は
哲学的思考に偏る
神の知恵は到達不能の諦め
理想的なモノだけに着目
特に数値での評価
です。資本主義など経済活動に関しては
金銭的な評価に重点
で議論しています。ここでは、社会への貢献や働く人の満足等が、見えにくくなります。
次に、アメリカ特有の問題は
歴史が浅い
面が大きく影響しています。例えば
職人のギルドの伝統もなく
マイスターの処遇なども弱い
ため、現場より理論の力だけが高くなりすぎます。
また別観点では、アメリカンドリームのゴールドラッシュがありますが、そこでは
「金鉱を見つけて売る」
だけを主要な金儲け手段とし
「自分で鉱山業を育てると言う人が少ない」
と言う状況になりました。
これは、現在の一部ベンチャー起業家にも
会社を設立して上手く売る
と言う発想につながっています。
これは、ベンチャーでは大規模経営は難しいので、上手く経営できる人に任せる、と言うよい面もありますが「売り抜けだけを考える」無責任な人もでます。
こうした「アメリカ的資本主義」の欠点を、よく見ておく必要があります。
3.戦後日本の資本主義
第二次大戦で敗戦国となった日本は、アメリカの支援を受け、米ソの冷戦状態の中で、資本主義陣営としての復興を遂げます。しかしながら、当時の日本経済は、とても自由市場の競争と言う状況ではありません。
戦後日本の経済は、通産省や建設省などの官僚が指導し、それを大企業が実現させる。その利得を下請け企業が貰うという形でした。これを、ソ連崩壊時の指導者ゴルバチョフは
「一番成功した社会主義国」
と評価しています。
成功例を挙げると、一九八〇年頃までは、日本の半導体産業は、通産省の指導の下、色々なプロジェクトを共同で実行し、アメリカに追いつき、半導体メモリなどの大量生産では、アメリカを追い越してしまいます。これは、官僚主導の計画経済の成果です。
しかしながら、このようなやり方は、アメリカ追従でなく、独自路線を考えるようになると頓挫してしまいます。有名な事例では、一九八〇年代の頭にスタートした10年計画の
「第五世代コンピュータプロジェクト」
は
「最初は斬新、半ば以降は時代遅れ」
と言う惨憺たる結果になります。なお、同プロジェクトで、追い越すべき対象だった、アメリカの大型コンピュータメーカIBMは、既に一九八〇年代頭にパソコンのネットワークに着目し、新たな方向を模索していました。
これをまとめると、
戦後日本の資本主義は
模範を追いかけるだけ
であり
多様化社会に独自対応できない
特に
経営者や管理者に思考停止が起こる
弱点がありました。
4.新しい資本主義
さて、現在社会は、資本主義に何を求めているのでしょう。これは、戦後日本の「資本主義」の欠点を修正したらよいでしょう。今までの話で出た課題は
金銭的評価に偏る
将来ビジョンを自分で描かない
経営者や管理職の思考停止
です。現在社会は、技術進化が激しく、旧通産省の「10年計画」などでは追従できません。しかも、社会が豊かになり、要求事項も多様化しています。そこで
単一の金銭評価->多様な評価
マルチステークホルダー
三方よし
の発想で
数値以外の要素を総合的に考える
経営手法が必要になります。このような能力がない経営には、市場主義での淘汰も必要になります。
なお、会社を潰しても、そこで働く人の生活は、護る必要があります。そのためのセーフティネットとしての、ベーシンクインカムも検討すべきでしょう。
さて「総合的」に考える手法は
主観的な検討法
理論より物語
図面より絵
の発想が有効だと思います。
会社としての全体像を描くとき
具体的な生きた人の物語
として考える。例えば、一つの会社において、その会社の製品や、サービスが、どのような人に使われて、喜ばれているか。社会の中で、どのように貢献しているか。一方、会社で働く色々な立場の人達、この人にも個々人の生活がある。こういうことを想像し思いやる。このためには、色々なエピソードなどを集めて、その場面を想像し、更に色々と展開して広げる。その上で経営方針を考える。こうした経営や管理が必要だと思います。
このような、総合的な思考力は、日本人の根底にある、大乗仏教の
総ての人に仏の智慧がある
と言う発想が、西洋文明の
神の世界は到達不可能
の限界を超えて道を拓くでしょう。
こうした「日本教的発想」が、新しい資本主義になると思います。
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