大乗仏教の対応
多くの人が恐れているのは『死』です。これに対して、仏の教えは「苦集滅道」の四聖諦で救おうとしました。
・この世は生・老・病・死の苦が満ちている
・苦しみの原因は人間の欲望である
・欲望は滅ばすことで苦しみをなくすことができる
・その具体的な道がある
さて、苦しみをなくす、具体的な方法について、仏教の進化とともに見ていきましょう。
まず、お釈迦様の言葉を集めた、阿含経典では
「死んだ人が一人もいない家はない。総ては、いつか死ぬのだ!」
と教えます。こうして『生滅』の運命は避けられないと、理屈で説きます。
次に、自分で修行した人は
「魂は不滅だ」
と感じる場合があります。例えば、江戸時代の高僧として有名な白隠禅師は、若いときに、徳の高い高僧でも、強盗に遭って不慮の死を遂げた、という話を聞き、修行などに意味があるかと悩みます。しかし、ある日坐禅をしていると
「自分がその高僧となって死体になっている」
と言う体験をし
「禅師は今も生きている」
という『魂の不滅』を体験します。こうした、自分一人で修行して解脱を求める。これを、大乗仏教の見方では、一人だけの悟りと言うことで、小さな乗り物『小乗』と言いました。
さて、小があれば大もあります。自分だけでなく、皆を救うと言うのが菩薩の境地です。実践していくため、無数の衆生に対して
「人を見て法を説く」
必要があります。相手の知識や修行の段階に応じて、時には
「死ぬことは避けられない」
と説くこともあれば
「魂は不滅」
と説くこともあるでしょう。
さて、大乗仏教は、もう少し上を求めます。つまり、
「私達にも仏の智慧がある」
と言う教えです。仏の智慧とは
「今私達がいる世界は、我がモノであり、その中の衆生は総て我が子である」
と言う教えです。これを『無作(=無為自然)』と表現します。
但し、仏の智慧を得るためには、どのようにしたら良いのでしょう。この答えは、天台大師は『円頓止観』を説き、弘法大師は『即身成仏』の教えを説いています。