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制御システム設計で大学の価値を知る
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図は、メーカーがモノづくりを行う場合の制御システムの製作フローです。左側は広い意味での制御システムの製作を考えて、製品の構想から、現場での運用開始までの流れで、右側は、制御系の設計段階を抜き出しています。さて学校で制御について学ぶと言う場合には、もっと狭い、制御対象のモデル化の部分が主です。特に数式的に表現された、制御対象を伝達関数の特性などで理解しています。または、研究としては制御のための理論を新しく考えています。このように、どちらかと言うと狭い専門分野を深く検討するというのが、学校で学ぶ制御の話です。
さてこれを、仕事として現実の物作りの上で考えて見ましょう。現実の世界で制御を行うためには、現実に起こっている現象を計測するための、センサ等の検討が必要です。さらに、実際の計算をディジタルで行うためには、有限精度での近似計算となります。多くの場合は、古典のPID制御で実現するとしても、積分と言っても平均値計算であり、微分と言っても数回の差で予測する程度の場合もあります。学生時代の話なら、ラプラス変換とZ変換にそう違いはないと考えているでしょうが、実際の制御をディジタル化する場合には、サンプリング間隔をしっかり考慮しないと、トラブルに巻き込まれます。
このような制御系の設計は、前例に従って行えば、多くはうまく行くことが多いのです。しかしながら、新しいモノを開発する場合などは、前例がありません。そのようなときは、根本原理まで遡って考える必要があります。
また、トラブルが発生した時などは、標本化定理をきちんと理解している、さらにフーリエ級数展開の意味をしっかり理解していることで、対応能力が違ってきます。大学で学んだことは、このような基礎的な原理まで戻れることで強みを発揮するのです。なお、センサに関しても、物理学的・化学的な原理や微少信号を処理するアナログ電子回路の基礎的な知識の有無は、やはり技術力の差となって生きてきます。
こうした知的基礎体力を身に着けているのが、工学部の電気系等の学科出身者の強みです。なお、このような事項は、今この場で理解できなくても、少し調べれば、理解できるというレベルでも値打ちがあります。出身学科によっては、このような基礎が必要と言うことが理解できない人がいます。さらに、数学の基礎が弱いと、フーリエ級数の元になる、三角関数から勉強しないといけなくなります。そのため、仕事の時間が膨大になります。このような基礎力の有無が、大学で学んできたことの価値です。