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実用になる知識について

現在日本は、アメリカなどから見れば

「博士号取得者など高学歴者の活用が下手」

と言われています。しかしながら、理論的な検討に長けた、専門家だけが力を持つ世界が、本当によいのでしょうか?

私は、専門的な理論検討の力を認めますが、現実の社会での問題解決には、それだけでは不十分と考えています。下の図で、現実の問題解決に使える思考法を示しますが、理論的知識はその一部と言うことを、知っておく必要があると思います。

上の図は、実社会で起こる問題を解決していくための、思考手段について表しました。まず、左下隅には、個別の「現実体験」があります。この様な経験的知識は、そのままで繰り返し使える場合しか有効ではありません。

次に、左の上には「理論的知識」による議論があります。物理学などの学問知識です。この知識は、一般性がありますが、使うためには、現実との対応を考える必要があります。例えば、電気の理論で「三相交流」について学んだとします。実際にある送電線は、鉄塔の左右に上下三本づつある。こうして三本の電線で三相を送っています。このように、現実に理論通りのモノがあると見いだす力が大切なのです。特に、現実の世界でトラブルが発生したとき、理論的に考えて、原因を究明することは、効果的な対策に役立ちます。送電線の例で考えると、雷が落ちた時、どのような電流が流れるかを考えて、鉄塔と電線を碍子で絶縁しています。こうした、トラブル発生時の検討には、理論的知識が役に立ちます。

さて、右下隅は「物語」の世界があります。断片的な経験が、まとまった話となると、人に伝えることもできます。例えば、送電線に関連して、メンテナンスの作業では、一回線ごとに行います。鉄塔の左右に二回線があるので、片方だけ送電を止めたメンテナンスします。また送電線だけでなく、発電所から変電所への流れと、そこで働く人の様子も想像できます。こうした物語があると、新しいアイデが生まれやすくなります。

最後に右上には、理論的成果を総合化した「システム・モデル」があります。複数の理論が網目の様につながり、現実世界の物作りに反映するためのモデル世界です。このレベルになると

理論的知識が活用できる

ようになります。送電線の例で考えると、流れる電流だけでなく、電線の荷重や引っ張る力、発熱による変形、素材の入手可能性などの色々な要素を考える必要があります。こうした多様な要素を考える「錬成シミュレーション」が、現在の設計支援環境として使われています。

こうした、理論的知識を総合化してモデル化すると

理論成果が物作りに生きる

ようになります。このモデル作成力は、一分野だけの専門性とは別に訓練する必要があります。

なお、理論的なモデルの上で、典型的なストーリーを動かすことが大切です。例えば、送電線の例なら、強風で揺れ動く場面等を想定して、モデル上でどこまで解析できるか考えます。この時、必要ならモデルの修正も行います。現実と理論の緊張関係の上に、活きる知識が育つのです。

さて、この図全体で表していることは、左側の独立した理論や経験と、右側の総合的なモデルやストーリーの違いです。学校の勉強や体験は、どうしても限られた世界で、限定的なモノになりがちです。しかしながら、実社会での問題解決には、相互的な検討が必要になります。まとまったモデルやストーリーで考える必要があります。

また、この図の上側は数学などの理論の使える世界で、下側は現実的な体験や、人間性の伝わる物語です。こうした現実性の物事を、理論的な世界で説明し、予測していく.このような作業も大切です。この図では、上下の交流となります。

こうして、総合的に考える、左から右への流れ、そして現実と理論の緊張関係を理解し、実行することが

知識を実用にする人財

への道です。


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