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私の道を照らす耀(ひかり) essay5
🌟迷いの中で – 未来への不安と、生きる目標を探して
子育ての幸せの中なのに、どこか空しさをを感じる
自分はどこへ向かうのか、この先どう生きていくのか—— その答えが見つからないまま、私はただ時間の流れに身を委ねていました。
ある日、教会にゆき、心のままに神様に祈ろう。静かで穏やかな空気に包まれた礼拝堂で、言葉にできない思いを神様に打ち明けました。
「どうか、私にできることを教えてください。道を開いてください」そう祈りを捧げ、礼拝堂を出ようとした時、
「ちょうど良かったわ。あなたに話したいことがあります。」と牧師先生に声とかけられ、イスに腰かけるとすぐに「あなたは、人を助けることに興味がありますか? 看護の道に進むのはどうでしょうか?」と…
「看護師―。」 正直思いもよらぬ言葉に驚きました。
そして、今の自分の気持ち、空しさ、これから自分が何をすべきか分からない焦りを伝えると先生は「一緒に祈りましょう」と話されともに祈ることができました。祈りの中、心の奥で耀が灯るような感覚が広がりました。
それから私は、導かれるように看護学校の受験を決意しました。
久しぶりの受験勉強、問題集を手に取り、試験に向けて机に向かう日々。
子育てと仕事と勉強の両立は、大変。家族の応援に心から感謝しました。
いよいよ試験の当日、緊張で倒れそう。大学受験思い出す。
試験…頭真っ白、「神様よろしく」と願いながら鉛筆を取りました。
発表の日、自分の進む道がこれなら決まるはず。そう思って掲示板に向かう。整列された数字をドキドキしながら目で追う。「あった!」
教会に電話をかけた。「先生、受かりました…」
先生は静かに「道が決まりましたね」と
私の心の中に一筋の光が差し込んだように思えました。
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🌟新たな学びの扉 – 社会人入学、若さに満ちた教室で
「ママ、どこいくの?」
新しいスーツに袖を通し、鏡の前でそっと襟を正す。ふと視線を落とすと、不思議そうに私を見つめる娘がいた。
「ママ、これから勉強するために学校に行くの。あなたと同じだよ。応援してね。」
そう伝えると、娘は「小学校に行くの?」と首をかしげた。
思わず笑ってしまい、「うん、そんな感じかな」と答えた。
深呼吸をひとつ。
玄関を出ると、少しひんやりした朝の空気が、頬をなでた。
🌟新しい始まり・・・
「おはようございます!」
緊張の面持ちの生徒たち。 私は一歩足を踏み入れる。
ほとんどのクラスメイトは高校を卒業したばかりの子たち。友達同士で、楽しそうに話している。
さぁ新しい始まりだ!
授業が始まると、忙しい毎日。
医学、解剖生理……初めて学ぶことばかりだけど、それがとても新鮮で、面白い。何より、「人を助けるために学ぶ」という目的が、自分の背中を押してくれました。
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クラスメイトとの距離も、少しずつ縮まっていく。
季節は過ぎて、年下の友人たちと切磋琢磨し実技の練習の毎日
いつの間にか笑い合う時間が増えていきました。
「看護師になる」という夢が、私たちを繋いでくれていた。
🌟ナイチンゲールの言葉-戴帽式の誓い
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🍀学生に一冊の本が与えられる 『看護覚え書』
フローレンス・ナイチンゲール (英 1820~1910)
「看護覚え書」
看護とは患者に新鮮な空気、太陽の光を与え、暖かさと清潔を保ち、環境の静けさを保持するとともに、適切な食事を選んで与えることによって健康を管理することである。
『看護覚え書』うぶすな書院
毎日、命に関わる、人に寄り添うということを徹底的に学ぶ時間。
厳しい課題に負けそうな時、友人たちと励まし合いながら過ごした。夜遅くまで勉強し、何度も実技の練習をし、臨床に出るためには合格してゆかなければならない看護技術と記録。目まぐるしく時間は経ってゆきました。
🌟看護の道へ進む決意を新たにする 『戴帽式』Dai Fei
ナイチンゲールの像が灯す ろうそくの灯。
教官からナースキャップを載せられてゆく。
心を新たにする:胸の奥から湧き上がる喜び、
これから待ち受ける未知の世界への不安が入り混じる
🌟看護の道を照らした、ひとつの出会い
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小児科実習
私は9歳の女の子を担当することになった。名前はさっちゃん。
彼女の病名は白血病。
はじめて病室に入った時、少女は少し微笑んで、静かに私を見つめていた。
さっちゃんは、娘と同じくらいの年齢。
小さなベッドにはさっちゃんの友達のクマとウサギのぬいぐるみ。
ウサギを抱きしめて、治療の激しい痛みを乗り越えています。
時には「もういや!」とクマを抱きしめながら、声をあげて泣くこともありました。
看護学生として、何をすることが最善なのか。悩みました。
そんな時、娘に「小さい頃に病院にいた時、どんな気持ちだったか覚えてる?」と聞いてみました。「覚えてるよ。怖かったし、痛かった。寂しかったし、お家に帰りたかった。ママとパパに会いたかった」と答えてくれました。
娘の言葉から、「安心して治療に専念できるよう、寄り添っていくこと」を目標に援助していこうと思いました。
朝は、薬の副作用で気分が良くないようでお布団をかぶっていることが多い、食欲がもなくなってきました。
さっちゃんはリンゴが大好き。すりおろしリンゴ作って、かわいいリンゴの模様のカップに入れて食事と一緒に置きました。
さっちゃんは「わぁかわいいりんご」「おいしいねぇ。だあいすき!」と笑顔を見せて喜んで食べ始めました。
清拭の時間、さっちゃん元気になろうね。何度もそう思いながら、
体を拭いてあげるときには、「くすぐったいよ」と笑いながらも、どこか安心したような表情を見せるようになりました。
ある日、彼女がぽつりと言った。
「おかあさんみたい。」
そういえば、さっちゃんの面会は来る人も少なく、お母さんにお会いしたことがありませんでした。
指導看護師に相談すると、「さっちゃんのお母さんは忙しくて、週に一度しか来られない。だからこそ、あなたがそばにいることは大切です。看護学生のうちにできることを、精一杯やりなさい。」
私は3歳の娘が入院したときのことを思い出しました。
娘が病室で絵本を読みたがったように、この子にも絵本にふれさせあげたら…
🌟「じぶんだけのいろ」-さっちゃんと紡いだ絵本の時間
次の日、私は一冊の絵本を持って病室へ向かった。さっちゃんの好きな
レオ・レオニの『じぶんだけのいろ』。
「今日から絵本の時間を始めたいと思いまーす。読んでもいい?」と聞くと、「うん!」彼女は大きくうなずいた。
ページをめくりながら、ゆっくりと。
小さなカメレオンが、ほかの誰とも違う「じぶんだけのいろ」を見つける物語。
さっちゃんはカメレオンの姿を追いかけ、物語の中に引き込まれて、静かに耳を傾け、ときどき頷きながら聞いていました。
それから続く 『さっちゃんと紡いだ「絵本の時間」』
痛みに耐えられず泣き出す日もあった。つらくて怒りをぶつける日もあった。
そんなときは、ただそばにいて、クマとウサギと一緒にさっちゃんを抱きしめた。そして「よく頑張ったね」と絵本の時間のはじまり。
💐お母さんと交換日記-また会おうね
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実習期間の3か月が過ぎる頃、さっちゃんは少しずつ回復に向かっていました。
絵本の時間を始めたころから、さっちゃんのお母さんに今日の様子やお話したことをノートに書き始めました。
さっちゃんが「私もママに書きたい!」というので『さっちゃんノート』を作りました。さっちゃんとママの交換日記の始まりです。
時々さっちゃんが嬉しそうに見せてくれます。さっちゃんの横のページにママの言葉や絵がたくさん。これがほんとの絵本。心を紡ぐメッセージ。
「ねえ、また読んでくれる?」
最後の実習の日、彼女はそう言って笑った。「さっちゃん。病気はきっと治る。私は絶対信じてる。さっちゃんは、私に宝物をくれたんだ、それは「大好きなさっちゃんとの時間。とっても楽しかった。また会いに来るからね。」私は精一杯の笑顔をつくって、いつものように絵本を開いた。
物語を読みながら、私は心の中でそっと祈った。
どうか、さっちゃんの「じぶんだけのいろ」を見つけられますように——。
さいごに‐まとめ
最後までお読みいただいてありがとうございます。
子育てをしながら看護の道を歩み始めたあの日。戸惑いながらも、一歩ずつ前へ進んできました。
命と向き合う日々の中で出会った、ひとりの少女。彼女と過ごす時間の中で、私は「看護とは」を、深く考えるようになりました。心に寄り添い、その人の痛みや不安にそっと手を添えること。それこそが、看護の本当のあたたかさなのだと気づきました。
一冊の絵本がありました。『じぶんだけのいろ』——その物語が、少女の心に静かに寄り添い、私たちの間にあたたかな橋を架けてくれました。
言葉にできない想いを、絵本がそっと紡いでくれることがある。と
少女との出会いを胸に、私はまた新たな一歩を踏み出します。
この学びが、これからどのように広がっていくのか——。
次の章へと続きます。また是非読んでいただけると嬉しいです
絵本ご紹介
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作 レオ=レオ二
訳 谷川俊太郎
一緒なら、周りの色がどんなに変わっても大丈夫。
おうむはみどり、きんぎょはあかい・・・動物はそれぞれ自分の色を持っていますが、カメレオンだけは周りの色に合わせて色が変わってしまい、「自分の色」がありません。
カメレオンは自分の色を持てないことを嘆いていましたが、あるとき、もういっぴきのカメレオンに出会い、悲しみを共有します。二匹は一緒に暮らすことにして、一緒に緑になり、紫になり、黄色になり・・・。二人で一緒なら、周りがどんなに変わっても、いつも同じでいられる・・・そんな単純で、そして本質的なことを気付かせてくれます。自分の色にこだわっていたカメレオンが考え方を変えることで幸せになります。その発想の転換に、はっとさせられます。大人にもおすすめの美しい作品です。