空太と怜子のランダムトーク【どこが面白い?その映画①】 「VIDEOPHOBIA」
映画について男性と女性に語ってもらうことにします。セレクトは気分任せ。話題の映画だったり、配信で見た昔の映画だったり。登場するのは以下二人。
♂ 空太: 30歳になったばかり。自称シネフィルだが・・・? 話が長い。テニスもするらしい。
♀ 怜子: 20代後半。直観で生きている。デートでは映画行かない派。男性には多少先輩でも「君」づけしちゃうタイプ。
二人がやって来ました。さてさて、どんな話になるかな・・・?
怜:ソラ君、久しぶり。映画についてしゃべる、ということらしいけど、私、映画好きだから、勝手にしゃべるよ。
空:おれもまとめる気ないからさ(笑)。適当に行こうよ!
怜:了解。今日の映画は『VIDEOPHOBIA』。どんな映画か、と思うけど 『大坂のアンダーグランドをテーマにしたモノクローム・サイバー・スリラー』っていうコピーが上手いね。『VIDEOPHOBIA』ってどういう意味?
空「『映像恐怖症』くらいの意味かな。主人公の女の子が行きずりの男との行為を盗撮されてネットに拡散されちゃう話。
怜:大坂も鶴橋が舞台か。この主人公の愛ちゃんって子、独特の顔だよね。
空:そね。俺さ、ムンクの絵に出て来るような顔だな、と。隈が強くて。見方によっては美人だけど・・・。
怜:何、それ(笑)。でも、SNSとか携帯とかが絡むホラー物って流行りだから、『ネット社会の恐怖』を中心に早く展開するような映画かと思ったら!
空:そうね。最終的には『ネット社会の恐怖』はテーマだけど、見られたくない映像が拡散していく『不安』をジワジワ伝えて来る。まずは『恐怖の肌触り』を実感させようとしている。
怜:なるほど。
空:ポスターからしてそう。最初見た時、男的には『顔パック』だとわからず怖かった。何だか、顔面に包帯してるように見えるよね。
怜:それ、遠からず、じゃん。
空:全編通して『顔』の映画だよね。まずは劇団員の顔の正面からのアップを続けて、ちょっと不自然で、どういう映画になるのかわからなかった。
怜:事件が起こって愛ちゃんが何とかしようと色々な所に行くけど、会う人会う人の顔が変と言えば変だね。
空:相談所の所員の女性の顔、あれは何(笑)。精神療養セミナーも、リーダーの自信満々な押し付け顔の異様さ。
怜:愛ちゃんのウサギの着ぐるみの顔も、一匹だけアップだと怖くなって来る。
空:事件が起こってから、カメラが全部揺れてるの、気づいた?
怜:揺れてるって?
空:手持ちにしてるのか、微妙に揺れてるんだよね。
怜:気づかなかった・・・。愛ちゃんが大きな決心をして、街を抜けて、川を船で行くところはカッコいいね。東南アジアの誰も知らない街に逃避行したのかと思ったよ。
空:鶴橋は行ったことないか・・・。あのあたりの『東南アジア感』って半端ないよ。
怜:で、どこに着いていったい何が起こるのか。ほんとにびっくりした。そして最後に出て来る女の子、あの子の顔がとてもいい! 無邪気なようでどこか不安を抱えてるいて、壊れやすいガラスのような雰囲気あった。
空:そうね。そしてあのラストだね。『不安』を増殖させて行って、ホラー的な雰囲気をちょこっと見せて終わる。うまかったなー。あれで締まったというか、『読後感』が決まったというか…。
怜:確かに、最後こそ不気味だったね。
空:そもそも考えてみればさ、最初のシーンは愛ちゃんの恐らくは出会い系のオンラインセックスだったよね?
怜:そうそう。あれもあれで結構危険ではないかと思うけど。
空:つまりさ、今回、リアルでのモラル違反に憤慨してるわけだけど、すでに日常でもっと危険なこともしてるわけよ。ネット社会へ首まで浸かって思ったより依存し切ってるんだよね。ネット社会って距離を取りながら他人と接しているようで、実はオンラインになればいきなりワープして接近する。それどころか自分のプライバシーの内側にいきなり入って来られる危険性も孕んでいるし、一度オンラインで繋がったそのラインの痕跡は、オフにしても消えてないんだよね。ネット=蜘蛛の巣のような絡まりの怖さを感じさせる映画だった。
怜:まとめる気はないといってたのにまとめて来るね(笑)。
空:そね(笑)。それから、音楽も良くなかった?
怜:電子音ね。心臓の鼓動みたいに。映画にバッチリ合ってた!
空:最高だよね。
怜:エンディングテーマの叫びが凄かった。
空:うんうん。『問題作・奇作』という雰囲気で煽っているけど、意欲的な 表現あって、モノクロもよくて、映画らしい映画だった。
怜:また、話そ。今日はありがとね。
(FIN)