「ベルセルク」感想。珠玉のダークファンタジー
※ネタバレを含みます。
ダークファンタジーの傑作、「ベルセルク」を全巻購入し読了したのでその感想をつらつらと書いていこうかなと思います。
今年の5月に三浦先生がご逝去されたと発表があり、未完の名作となってしまったベルセルクですが、私は友人に借りて断罪編までを読んでいました。
千年帝国の鷹編以降を読了し、もう一度1巻から読み進めて、黄金時代編と断罪編ロストチルドレンの章まで読み直しました。
率直に言って本当に面白かったです。それだけに未完になってしまったことが本当に悔やまれる作品でした。
ベルセルクの与えた影響
ベルセルクの魅力は何と言っても画力だと思います。”それは漫画というにはあまりにも上手すぎた。”な画力に圧倒され続ける全40巻でした。
そしてその鮮烈なビジュアルと容赦のない物語は他作品への影響も計り知れません。
フロムソフトウェアのゲーム「ダークソウル」や「ブラッドボーン」などの所謂ソウルライクシリーズもベルセルクの濃い影響化で生まれた作品だと思います。
ヨコオタロウ作品への影響もかなり強いと思います。DODやニーアシリーズは物語の雰囲気や各種ギミックがかなりベルセルクの要素が多いです。DODなんてもろにベルセルクだなぁと思いますね。精霊出てくるし、鉄塊という大剣も出ますし。
FF7なんかもそうですね。主人公が大剣を持ってかつての仲間だった銀髪の剣士を探す旅に出るというのは完全にガッツとグリフィスの構図そのものです。セフィロスなんかもろにグリフィスですし。
鋼の錬金術師や進撃の巨人といった後発のダークファンタジー作品にも強い影響を与えています。
ハガレンのホムンクルスはかなり”使徒”の要素がありますし、エンヴィーの体に顔が沢山ついてるビジュアルなどは完全に”蝕”のシーンから来ていると思います。
「進撃の巨人」ではトロスト区奪還作戦の最後に駆け付けたリヴァイがエレンを助けたときのコマは断罪の塔の章の駆け付けたガッツがキャスカを助けるコマから引用されていると思います。あと何より”地ならし”の元ネタは間違いなく魔獣化したガニシュカだと思います。
それ以外だと虚淵玄作品への影響もかなりあると思います。
テレビアニメ「PSYCHO-PASS」の狡噛と槙島のビジュアルも含めたキャラクターは完全にガッツとグリフィスで、復讐というテーマもPSYCHO-PASSの大枠の流れとも合致しています。
同じくテレビアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」のまどかとほむらの関係も、神という概念になったまどかとそれを追いかけるほむらという構図が、ゴッドハンドに転生したグリフィスとそれを追いかけるガッツとでかなり似ていると思います。
まどマギは新作映画がやるらしいので、叛逆の物語の続きとなると完全にベルセルクみたいなことになりそうなので楽しみです。
そういう感じで、自分が好きな作品に通じる要素が多くて、まさにダークファンタジーの古典だなぁと興奮しながら読んでいました。
好きなエピソード
個人的にベルセルクで一番好きなエピソードは断罪編のロストチルドレンの章です。だいたいベルセルクで人気なエピソードは黄金時代編ですが、私は圧倒的にロストチルドレンの章です。
ロストチルドレンの章はあらゆる要素がすべて向かうべき方向へ最後まで進むのが本当に良いです。端的に言ってしっかりと物語の起承転結が整っているのが好きです。
1~3巻のガッツは蝕の直後でかなり闇の部分が濃いキャラになっていますが、本章では光と闇のバランスがちょうど半分半分になっていて、ガッツというキャラが主人公として物語に立てていると思います。
後半ではすっかりギャグ要員になってしまったパックも本章ではしっかりと物語的なキーとして存在しているのもとても良かったです。
章のタイトルにチルドレンとついているように、子供の視点と成長も丁寧に描かれていて、その純粋性と残酷さを最後まで描き切ってくれました。
本章の最後のガッツの台詞、
「逃げ出した先に、楽園なんてありゃしねぇのさ。たどり着いた先、そこにあるのはやっぱり戦場だけだ。」
この台詞には本当に心打たれました。
ガッツは続けて「行け、お前はお前の戦場に。」と言って闇の中に消えていきます。
生きるということはそれそのものが戦いであり、世界はすなわち戦場であるという残酷な現実は、剣だけを頼りに生きてきたガッツの口から語ることに大きな意味を持つ言葉であると思います。そしてそれは当然現代に生きる我々にも当てはまる普遍的な真理であると思います。
好きなキャラクター
ベルセルクで一番好きなキャラはルカ姉さんです。
ルカ姉さんは娼婦でありながらとても太い芯を持っていて、良識と人に対する優しさをもちながら、世界が綺麗ごとだけでは回っていないことも理解しているというなかなか凄いキャラです。
もともと強い女性キャラは大好きですが、ルカ姉さんの強さはよく強い女性キャラが持っている”男性的な強さ”に加えて、母性にも近い”女性としての強さ”も持っていて、本当に奇跡的なバランスで成立しているキャラだなと思います。
あと個人的に創作内においての娼婦という設定が個人的に結構好きです。
映画などではよく出てきますが、漫画やアニメでは意外にレアな設定だったりします。
創作における娼婦が好きなのは肉体的な結びつきが精神的な結びつきに直結しないからです。
つまり、娼婦の設定におけるキャラを落とすには登場人物たちの生き様をもってその心をつかまなければならないということが非常にフィクションとして燃える部分になるというわけであります。
少し脱線しましたが、ルカ姉さんはとにかくキャラクターとして完成されていて本当に好きなキャラです。
ベルセルクのアニメ
ベルセルクのアニメ版は97年版のテレビアニメと、劇場三部作の黄金時代編は観ました。
97年版はとても良かったです。手書き作画でできる限り原作の絵が再現され平沢進の曲が見事にマッチして最高でした。
劇場版の方は、まぁそこそこかなぁといった感じです。2016年のCGアニメは1話で辞めました。
できることならロストチルドレンの章はアニメ化してほしいですが、難しそうですね。多分無理でしょう。
未完の名作
ベルセルクは未完の名作として幕を閉じることになりました。
それはとても残念なことではありますが、ベルセルクはすでにカルチャーにおけるファルコニアになっていると思います。
すでに様々な作品に影響を与えているのに未完であること、これは映画で言えばアレハンドロ・ホドロフスキー監督の「DUNE」、ゲームで言えば小島秀夫監督の「P.T」のようなカルチャー的マスターピースになっているということだと思います。
だからこそ、ベルセルクという伝説は今後も語り伝えられていくと思います。
9月に開催される大ベルセルク展には絶対に行こうと思います。
三浦先生の偉大なる画業に敬意を表します。
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