上甲板に出ると刺すように冷たい風にセーラー襟が靡く。 広がる景色を見下ろしすべてが既知と疑わず高揚した日が遠く霞む。その場に身を委ねると生温くさえ感じたが、肌をかする風は知るより鋭く、時間が経てば見えない血を滲ます。 何がためにそこに立つのかと聞かれたら、綻び繕いながら歴史を背負う船の全貌を見るがためよと。命を削り外に映し中から見える事はあるまい何かを透かす。さも価値あることぞと嘲る。 視線はいつしかその重厚感に飲み込まれ、浮かんでいる事すら不思議と揺らいでいる。爪先の前
澁澤ドラッカー研究会主催『生き延びるためのドラッカー入門』(夜間全10回講座)がとてもいい。いつもならばまず参加は無理とあきらめていたはずだろう。偶然の初回1回だけ、が3回目まで叶っている。家族が近すぎる毎日の環境の中、夜のルーティンワークの時間に哲人に触れ溺れる時間、もはや背徳感なる甘美の成せる業なのか?笑 説明はつかないが、夫、3人の子どもたちの協力あって成立している事は間違いなく、有難い時間です。 そして、3回目の夜に得たこと。 困難な状況やハプニングに対して「楽し
あわただしく朝ごはんが終わると、父は仕事で兄たちは学校へ出かけ、急に辺りから風が入ってくるのだけど、母だけは同じ温度で動いている。ここからしばらく母は食器を洗い続ける。 確かに5人分の洗い物は一仕事なのだけれど、今思うと手はあまり早くなく、いいのにと思うくらい丁寧。私は母の足元で、いつも夏の空のような濃い青、そしてふんわりした袖がゆらゆらしているのを、ただただ見ているだけ。洗剤の匂いが届くのを待っている。