絵を上達させたいなら、デザインも学んだほうがいいかもという話
近頃は検定の勉強ばかりで、ここ二ヶ月ほどろくに絵の練習をした記憶がありません…流石にちょっと時間の捻出を考えないといけないかもと思い始めた今日このごろ
以前から情熱が持てず練習嫌いだと何度か記事に書いているんですが、テスト前の「全然勉強してないんだよね」みたいな話ではなく本当に全然やってないんですよね、お恥ずかしいながら。それでも何故か上達してたりするのは、私に才能があるからではなく、絵の練習をしていなくても、他にやっていたことで絵に必要な能力が育った結果上達したからだと思っています
最近で言えば、製図やCAD、デザインとかですかね。3DCADのSOLID WORKSが楽しくて3DCGに興味を持ったり(PC買い替えたらBlender欲しい)、デザインはまだプレゼン資料などしか作れてなく本を読んでるくらいなんですが、最近読んだデザイン本が、デザインに興味を持つ人だけでなく、絵が上達したいという人にも凄く役に立つ内容が多いなと感じたので、今回は絵の上達にデザインを学ぶのはアリじゃないかっていうお話です
その本は「センスがないと思っている人のための読むデザイン」鎌田隆史:著 という本で、デザイン本の中で珍しく画像がほとんどなく、デザインに必要なレイアウト、色やフォント使い、表現力などを磨く方法を著者の経験談や理論とともに丁寧に説明されています
デザイナーにはデッサン力が必要?
この本の面白い所は、第二章が「デッサンと描写力」でデッサンについて50ページ以上に渡って丁寧に語っていることです。絵描きの教本を読んでる錯覚を覚えるほどで、デッサンの必要性はもちもん、デッサンに苦手意識を持つ人でも実践できそうなデッサン力を上げる方法も語られています
デザイナーは絵が描けなくても出来るものだと思われがちですが、デッサンで培った観察力と描写力はデザインのクオリティの下支えになるとのこと
例えば、鳥をモチーフにしたロゴやマークデザインをするのなら、デフォルメするにしても、どうしたら鳥らしく見えるかを考えなくてはいけません、そんな時に力になるのが観察力などのデッサン力です。
これは思いっきり絵に当てはまりますよね、”らしく”見える説得力のある絵を描くには、描かないモノの裏側や、そのものの構造を把握しておく必要があるのです。それらを見つけられるようになるために、デッサンで「観察力」や「描写力」などを鍛えるのです
デッサンや写実絵は立体を平面に描き写すことじゃない
デッサンは三次元の実物を二次元の絵に落とし込むものです。見たものををそのまま絵にしているわけじゃないんです。
本書でも3次元から2次元についてはいくつか語られているのですが、予備校講師の方との会話がとても興味深かったので引用させてもらいますね
2次元を3次元にするのはとても大変なことです。私は立体を作っていたことがあるんですがイラストを忠実に立体化しようとすると、違和感があるものが出来て、大幅な修正が必要になることが多いです
3Dから2D、3Dから2Dどちらにしても、その過程で作り手が”説得力がある””より[それらしく]見える”物にするために手を加えまくってるわけです
前にお絵かきソフトで3Dの人形素体を使って絵を描く事はズルか?という話をしましたけど、ズルではないけど、それでは上達しない、のは当たり前の話なんです。3Dから2Dにするために嘘を吐かないといけないのに、何も考えずそのまま3Dの輪郭をなぞって2Dのイラストにしても説得力どころか違和感が出る事にしかなりかねないのです
とはいえ、絵が描けないデザイナーも、デッサンをしないけど絵が上手い人もいるのは事実、でもそういう人はデッサンに替わるなんかしらの経験や練習で、観察力や描写力、バランス感覚や感性が身についている事が多いようです、それに関しては本書だけでなく「絵はすぐにうまくならない」著;成富ミヲリ でもふれられていました
とはいえ、コミックイラストでデッサンが避けられがちな理由ので大きいのは「難しそう」「大変そう」なんだと思うのです、はっきり言ってデッサンはハードルが高い!模写で好きなキャラを描いている方が断然楽しいやん(でも長い目で見ると絵が上達しないのでしんどさは大きいだろうけど)
本書ではデッサン力を鍛えるために意識すべきことや、モチーフを立体で作ってみる方法や、実際にモチーフを描くつもりで観察する方法など、時間が取れず、やりやすい方法を教えてくれるので、デザイナー志望だけでなくお絵かきの教本としても良書だと思いました
デザインにおける配色やレイアウトなどのセンスは絵のセンスにもつながる
デッサンについての内容が多い本書ですが、色やレイアウト、フォントなどの使い方や感性の磨き方、センスの磨き方も丁寧に書かれています。もちろん配色センスはイラストにも必要ですが、レイアウトや余白にはピンときづらいかもしれませんが、構図や見せ方を考えると、レイアウトや余白を考えることが大事になると思うのです
デザインは目的ありき、人中心に考える課題解決の為にするもの
デザインってセンスが高い人がかっこいい、おしゃれなものを作ることだと思われがちですが、デザインの目的は課題解決であり、対象を設定し、対象に何をしてほしいかを考え、そのためにデザインを作る必要があるのです、商品を買ってもらう為の広告が分かりやすいですね
まずは目的と内容があって、それを目的のためにより強調したり、目的を達成するためにデザインがあるのです
デザイナーはクリエイターであるのですが、これが絵になると、クリエイターとアーティストの区別が出来てない人が多く、特にネットでよく見かけるイラストレーターに関する話、いわゆる大きな声ってほとんどが「クリエイターとアーティストの区別がついておらず、どっちつかずの中途半端な人の意見」ばかりで、それが絵描きの考えの歪みになっているケースが多いように思います
クリエイターは依頼されてものをつくる人であり、クライアントの頭の中にあるイメージを汲み取り具現化するお仕事なのですが、それに対しアーティストは作品を通じて、自己表現やメッセージを伝える事になります
絵を描く仕事でいうならイラストレーターはクリエイターで画家、作家はアーティストです
ですが、それなりの技術を身に着け、トレンドを追い続け、需要のある流行りの絵柄で描き、SNSでフォロワー数を増やしバズれるようになれば、イラストレーターになれる、みたいな風潮があり、SNSでイイねをもらう事がイラストを描く目的になっている人が多いように思います
流行りや大衆受けばかり狙い、数を稼号とするのは、クリエイターらしさではないんですよね、アーティストとは対極で、そういう考えで描いている限りどちらにもなれません
どっちつかずの中途半端な存在にならないためにも、デザイン思考を学びクリエイターの考えを身につけるのは重要だと思います
結論としては、デザインを学ぶことで絵の上達に必要ないろんな事が学べるし、逆に良いデザインを作るためにも絵心が必要であり、両方は繋がっているので、絵の上達のためにデザインを学ぶことはとても有効だと思います
デザイナーさんが描いたデッサン教本としては「なるほどデッサン」著:白井岳志 がありますが、これもおすすめです。
デザイナー視点の初心者向けのイラスト教本がもっとでてきてくれたらいいなと思う今日このごろです